本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]
工事用のトレーラーが朝の現場に入る。北米の住宅現場で、同社グループの施工チームが工程表を確かめながら資材を動かす。住宅需要の回復を2027年3月期以降と見て、北米の施工体制を底上げする考えだ。日本の「ヘーベルハウス」で培った工業化の知見を、米国の施工と結びつける。市況の揺らぎに合わせて動き、回復局面で供給を取りこぼさない狙いである。
北米で進める「サブコン一体化」の狙い
同社は米国で、サブコン(施工を担う下請け業者)を横につなぎ、工程を束ねて提供するモデルを広げている。米アリゾナ・ネバダで構造材の供給や躯体施工を手がける基盤に、電気・設備や配管の専門会社を加え、さらにフロリダでは殻工事に強い施工会社を傘下に収めた。設計図から現場までの流れを一体で管理し、工期の乱れを抑える発想だ。
背景には、現地の住宅建設で慢性的な人手不足と資材の目詰まりがある。部材の手配、職種間の段取り、天候や検査の待機など、ばらばらの要素が遅延を生む。サブコンをグループとして束ねることで、工程の見える化と同時施工の最適化が進み、現場の滞留が減る。日本の工業化で磨いた標準化や品質管理を、各職種の作業へ細かく落とし込むのが肝になる。
北米では、施工の水平統合によって「いつ、どの職種が、どの仕様で入るか」を前倒しで確定し、資材と人を同じリズムで動かすことが収益の鍵を握る。結果として、ビルダーの工程表に対する予見性が高まり、手戻りや待ち時間が削減される。景気の波に合わせて規模を伸縮させやすい構造が、回復期の受注消化力を左右する。
金利高止まりの逆風と、在庫を流す導線
今の北米は金利の高止まりで着工が鈍り、ビルダーがスピードを調整している。価格交渉の重心は利払い補填や値引きに傾き、マージンは圧迫されやすい。サブコン側の工程も連鎖的に緩み、稼働率の低下が収益に影を落とす。回復が遅れる局面では、固定費を抑えて技能とチームをつなぎ留めるマネジメントが問われる。
一方で、すでに受注済みの案件が一定量あるなら、着工のアクセルが戻った瞬間に現場へ流せる体制を持つことが重要だ。職種をまたぐ調整に時間を要しないほど、受注の積み上げが素直に売上に変わる。金利動向は読みにくいが、工程の“つなぎ”を平時から整えておけば、波が立った後の戻りで差が開く。
短期の逆風に耐えながら、現場の標準化とデータ連携を進める姿勢は一貫している。遅れがちな検査や部材供給のボトルネックを事前に洗い出し、代替ルートを確保する。足元の採算に厳しさは残るが、回復局面に入った際、工程の同時化と品質担保が収益の伸びを下支えする構図だ。
豪州との対比で見える、工業化の横展開
海外事業は北米と豪州が柱である。豪州ではインフレの落ち着きとともに受注が戻り、工期短縮や標準化の効果が数字に表れやすい。北米は市況回復の遅れが響くが、職種の広がりと地域の多様性を持つぶん、工程設計の工夫が効きやすい。日本で積み上げた工業化の手当てをそれぞれに最適化することで、全体の底上げにつなげる。
共通するのは、データに基づく現場運営だ。工程の開始・終了、部材の搬入、検査の合否を時系列に記録し、次の現場へフィードバックする。単体の現場改善にとどめず、複数職種を横断した“現場のOS”として回す。地域差の大きい北米でこれを回し切れるかが、供給能力の伸びしろを決める。需要の波が戻る前に、どこまで磨けるかが勝負どころだ。
工業化は現場の裁量を奪う取り組みではない。むしろ、ばらつきを減らして職人の技能が発揮される時間を増やすことに意味がある。標準部材の活用や事前組立ての導入は、仕上げの品質を安定させ、検査の通過率を押し上げる。結果として、工程の読みやすさが増し、ビルダーからの信頼が厚くなる。
数字で読み解く計画と布陣
同社は2027年度を最終年度とする中期経営計画で、連結売上高を1兆2000億円へ引き上げる方針を示している。国内の安定基盤を軸に、北米と豪州の成長を重ねる描き方だ。目標の達成には、市況の回復待ちではなく、施工の生産性を先に高めておく“先回り”の投資が前提になる。北米でのサブコン一体化は、そのための装置といえる。
体制面では、海外事業を統括する常務執行役員の下、北米の持株会社が現地のサブコンを束ねる。構造・設備・配管の各領域を備え、フロリダにも展開拠点を得たことで、米国南部から西部にかけて供給網が広がった。社長交代を経てグループの意思決定は一段と機動的になり、現場起点の改善を経営に直結させやすくなっている。
市況は一定の揺らぎを伴う。それでも、工程の見える化と標準化を積み上げるほど、需要の戻りに伴う“詰まり”は小さくなる。数字の達成は外部要因に左右されるが、現場の力は日々の改善でしか育たない。静かな積層が、回復の坂を登る足取りを確かにする。