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出発ロビーの電光掲示板に「欠航」の文字が次々と灯った。11月24日午前、中国と日本を結ぶ12の路線で、すべての便が運航を取りやめていることが中国の航空データから明らかになった。杭州―名古屋、南京―福岡など、観光やビジネスで使われてきた路線も例外ではない。突然の足止めは、空港に向かった人びとの旅程だけでなく、両国の関係の揺らぎも映し出している。
航空便の大量欠航、その背景にある外交の緊張
今回全便欠航となった12路線は、華東や華南の都市と日本各地を結ぶものが中心で、天津―関西国際、広州―関西国際なども高い欠航率となっている。中国の民間サービス「航班管家」の集計では、日本行きの全便のうち欠航が占める割合は11月27日に21.6％に達する見通しだ。わずか数日のあいだに、東アジアを結ぶ航空網の一角が大きく痩せ細った形である。
きっかけとなったのは、7日に高市早苗首相が国会で台湾有事をめぐり「存立危機事態」への言及を行ったことだ。存立危機事態とは、日本の安全保障関連法で集団的自衛権の行使を可能にする深刻な危機の段階を指す。中国外務省は14日、日本への渡航を控えるよう国民に注意を出し、治安の悪化や中国人への危険を一方的に強調した。その後、中国国際航空など大手各社が日本行き航空券の無料キャンセルや変更を受け付け、実際の便の運休や減便が一気に広がった。
変わる旅行先、中国人観光客と日本の地域経済
中国メディアは、日本行きの便の運休が増えるなかで、中国人にとって人気の海外旅行先が日本から韓国へ移りつつあると伝えている。ビザ免除や距離の近さなど条件が似ているだけに、政治情勢の影響を受けにくい行き先へ需要が流れている可能性がある。これまで訪日客の柱だった中国人旅行者が減れば、地方空港の国際線や、団体客をあてにしたホテル、免税店は厳しい調整を迫られる。
一方で、日本側からは「特定の国の観光客に依存しすぎた反省」が聞かれ始めている。円安とインバウンド（訪日外国人旅行）頼みで売上を伸ばしてきた商店街や宿泊施設にとって、今回の欠航と渡航自粛は痛手だが、客層の多様化や国内需要の掘り起こしを考える契機にもなりうる。出発ロビーに並んだ空の搭乗口は、東アジアの緊張だけでなく、日本の観光の在り方の転換点を静かに示している。
