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10月4日の投開票まで、残りはわずか3日だ。表に出ない選挙事務所の時間は静かに進む一方、画面の向こうでは波紋が広がっている。ネット発信の手法やショートメッセージの活用をめぐり、境界線はどこかという問いが浮かぶ。党が定める禁止行為との距離感が注目され、党員・党友票の行方にも微妙な陰影を落としている。
静かな終盤に広がるざわめき
街の演説会場では拍手と歓声が交錯するが、終盤の空気はむしろ静かだ。静けさを破るのはSNSのタイムラインである。候補者の動画には賛否の書き込みが折り重なり、心ない言葉もにじむ。現時点で確認されている範囲では、ネット上の振る舞いそのものが争点を帯び、政治と生活の距離の近さと脆さが同時に浮かんでいる。
一部報道によれば、小泉進次郎陣営の周辺で称賛コメントの書き込みを促すような振る舞いがあったとされ、候補者側は「最後の責任は自分にある」と謝罪したと伝えられた。真偽や経緯には揺れが残るが、受け手の違和感は簡単には消えない。偶然の行き違いか、必然の設計か。総裁選という短期戦の緊張が、ネットの一挙手一投足に過度な意味を与えているように映る。
さらに、地元での党員処分をめぐる記事や、それに対する強い抗議の発信も相次いだとされる。真偽の争いは法廷の外で続き、論点は政治倫理から情報の扱い、言論の自由へと広がっている。誰のための発信で、どこまでが正当な反論なのか。短い投稿の応酬が、選挙そのものの空気を変える力を持つことを、改めて示しているといえる。
何が禁止で、どこまで許されるのか
総裁選の運動に関して、党は具体的な禁止事項を通達している。物品の配布、文書の大量郵送、インターネットでの有料広告、そして自動音声によるオートコールの使用は禁じられている。都道府県連による特定候補の支援、党機関紙の利用、投票用紙の集約も認められない。「そのほかの金をかける行為」も併せて歯止めとされ、費用競争の芽を摘む設計である。
では、携帯に届くショートメッセージはどうか。規程に明文の禁止は見当たらない一方、電話番号を用いた働きかけである以上、受け手には電話に準じた心理的負担が生じ得る。業者委託の一斉配信であれば「金をかける行為」に近づくが、ボランティアの手作業なら許容されるのか。判断は運用に委ねられ、グレーの濃淡が残る構図だとみられる。
SNSには、知らない番号から投票を促すメッセージが届いたという声も散見される。情報の出所が不明な働きかけは「いたずら」と映る恐れがあるうえ、個人情報の扱いへの不信を増幅させる。送った側に法令・規程上の理屈があっても、受け手の体感が追いつかなければ支持拡大には結びつかない。総裁選の手法は、規程の網をくぐり抜ける巧妙さより、透明さの度合いで評価される局面に入っている。
党員票の重みと、残された時間
今回の総裁選は、国会議員票と同数の党員・党友算定票を組み合わせる「フルスペック方式」で争われる。地方の声を反映させる設計が、首都圏の熱量だけでは測れない選択を呼び込む可能性がある。各陣営の野外演説や討論会に加え、デジタル空間の発信が党員の判断材料を増やしている点は、前回まで以上に顕著であると映る。
日程はすでに固まっている。告示は9月22日、投開票は10月4日で、党員・党友の投票は10月3日が締め切りだ。郵便投票である以上、タイムラグは避けられない。党は早めの投函を促し、各地の事務局は問い合わせに追われる。締め切りの線は明快だが、実際の投票行動は天候や生活リズムにも左右される。だからこそ、最終盤のメッセージは一段と生活感に寄り添う必要がある。
公平公正の運営を求める声は、党内外で強まっている。選挙管理側は必要に応じて注意喚起を行い、候補者の論戦の土台を整える構えだとみられる。規程に照らして問題がない行為でも、受け手が不安や不信を抱けば政治の損失になる。ネットの使い方が勝敗を左右するのか、それとも最後は地上戦がものを言うのか。残された時間に、支持の結晶化が静かに進んでいる。
