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日本時間2025年9月26日、日英仏やサウジアラビアなど12か国が、財政難に直面するパレスチナ自治政府（PA）を支える新たな枠組み「PAの財政持続可能性のための緊急連合」を立ち上げた。焦点は単発の資金注入ではなく、統治と治安、そして生活を下支えする公共サービスを止めない仕組みづくりにある。連合はイスラエルに対し、差し押さえ中の税還付金の即時解放も求めており、中東の安定と二国家解決の「土台」をつなぎとめる試みが動き出した。
なぜいまPAを支えるのか
舞台はヨルダン川西岸の行政中枢ラマラである。ここで機能してきたPAは、医療や教育、治安維持といった住民の基礎を担う存在だが、税還付金の差し押さえが長引く中で、予算の目詰まりが深刻化している。自治政府の崩れは、ただちに給与の遅配や公共サービスの停滞として表面化し、社会の不安と政治の空洞化を招く。暴力の連鎖を断つには、対話や停戦の前に、住民が日常を維持できる最低限の行政機能を守り抜くことが欠かせないという判断が、連合の出発点にある。
共同声明は、イスラエルに対しパレスチナの税還付金の全額解放を要求し、PAを弱体化させるあらゆる措置の中止を促した。声明文は、PAの財政安定が地域の平和と安全に直結するという認識を強く打ち出している。つまり、財政の穴をふさぐことは、治安と政治対話の余地を回復させる前提条件であり、二国家解決の実現可能性を「つなぎ止める投資」であるという位置づけである。
緊急連合の狙いと仕組み
連合は短期の資金繰りにとどまらず、予測可能で調整された支援を重視する。国際金融機関や関係パートナーと連携しながら、資金の動員と統治・経済改革の後押しを並行して進め、透明性と説明責任を確保する方針だ。単独のプロジェクトや場当たりの拠出ではなく、収入と支出の流れ、債務管理、公共サービス提供の仕組みを“線”で支える設計といえる。開かれた枠組みとして他の国や国際機関の参加を歓迎し、支援の「厚み」を増やす構えも示した。
この連合には、日本、英国、フランス、サウジアラビア、スペイン、ベルギー、デンマーク、アイスランド、アイルランド、ノルウェー、スロベニア、スイスが名を連ねる。欧州と中東、そして北欧まで、地理的にも政治的にも幅を持つ顔ぶれだ。多様な参加は、支援が特定の陣営の意図に回収されず、PAの制度安定そのものに重心を置くという合意を可視化する。連合は“排他的な同盟”ではないと明確にし、今後の拡大も視野に入れる。
拠出の動きと今後の焦点
具体化の動きも始まった。2025年9月25日、サウジアラビアのファイサル・ビン・ファルハーン外相は国連総会の会場で、同国として連合に拠出すると表明した金額を明らかにした。政策メッセージと資金の裏打ちをセットで示した点は、連合の実効性に直結する。単なる政治的連帯に終わらせず、現場の支払い能力を回復させる資金フローに落とし込めるかが問われる。
一方で、各国の拠出総額や国別の内訳、支出の優先順位は、現時点で公表情報が限定的である。連合は、PAの財政基盤を強化しつつ、医療や教育、水・電力、治安など不可欠サービスの継続へ資金を配分するとしている。財政支援と同時に、徴税や歳出管理、公共部門改革といった制度面の支えをどう設計し、合意に基づく監視枠組みで透明性をどう担保するかが鍵になる。資金の“見える化”は国内外の信頼を呼び込み、民間部門の呼水にもつながる。
短期の資金繰りだけでは危機の再発を避けられない。連合がめざすのは、PAの財政と統治機能を“持続可能”の軌道に戻すことだ。税還付金の解放が実現すれば、安定化の速度は上がる。だが仮に難航しても、連合による予測可能な支援と改革支援の両輪を回し続ければ、社会基盤の維持は可能である。中東の緊張がやまないなかでも、二国家解決の土台を壊さないという最低限の合意を制度と資金で支えること――それが今回の連合が投げかける、現実的で重たい宿題である。
