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配水設備の放流口で、新しい水車が回り始めた。日立産機システムが2025年10月15日に発売したマイクロ水力発電機「EBS-F150L」は、落差3〜10mという小さな段差でも発電できる。既存の配管や水路の流れを止めず、動く水の力をその場で電力に換える装置である。
低落差がひらく設置先
同社の既存機種は低落差域での適用が難しかったが、新モデルは3〜10mの範囲に対応し、設置候補が一気に広がった。特に、ビルや工場の冷却用循環水の戻り配管、工業用水の放流口といった、常時安定した流量がある経路で力を発揮する。
水道施設の受水設備や配水池の越流部、下水や水処理場の河川放流水なども有力な適用先だ。大規模な土木を伴わず、既設設備の圧力差や高低差を回収する考え方は、運転を止めづらいインフラの省エネ策として相性がよい。
運用面では、設備監視サービス「FitLive(遠隔で稼働状況を監視する仕組み)」に対応し、状態をリアルタイムに把握できる。異常兆候の早期検知や停止時間の短縮につながり、分散した小規模電源でも安定運用を支える。
斜流とオープンインペラの工夫
EBS-F150Lの特徴は、斜流(軸に対して斜め方向に水を導く)構造を採った点にある。水がまっすぐ入る軸流よりも、低い落差でも水車に有効な速度と角度を与えやすく、大きめの流量を受け止めやすい。低落差・大水量という現場像に合わせた設計だ。
さらにオープンインペラ(カバーのない羽根車)を採用し、発電部分の構成を簡素化した。異物のかみ込みや堆積のリスクを抑えつつ、分解点数を減らすことで点検や清掃の手間を小さくする。日常の保守が短時間で済むほど、発電機は止まらない。
小型発電は、出力そのものより“止めない工夫”が価値を左右する。遠隔監視とシンプルな構造の組み合わせは、現場が抱える人的制約や夜間運用にも寄り添う。既設の制御盤や計装との連携も想定し、取り替えやすさを意識したつくりである。
導入現場で見るポイント
導入側が確認したいのは、可用な落差と流量、堆積物の性状、停止できる時間だ。スクリーンやストレーナの位置、流量制御弁の開度、計測点の設置余地まで見ておくと、据え付け後の“想定外”を減らせる。設計の肝は、既存設備の運転を乱さないことにある。
発電量は落差×流量で決まり、配水や冷却の運転に応じて上下する。回収できる電力価値は、系統の購入単価や需要側の時間帯で評価が変わる。だからこそ、評価指標を事前に決め、実測データで見積もりを補正していく手順が導入効果を確かにする。
EBS-F150Lが照らすのは、都市の中にある“止まらない水”の活用だ。ダムや大規模水路に頼らず、建物やプラントが持つ循環の力を小さな電源に変える。分散型の省エネは一足飛びには広がらないが、適地が増えるほど選択肢は厚みを増していく。
静かな回転が、見過ごされてきた落差の意味をゆっくりと示している。