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冷えた海風が吹き抜ける石狩のコンテナ型データセンターで、新しい計算力が立ち上がった。さくらインターネットは2025年10月20日、マネージドスーパーコンピューター「さくらONE」でNVIDIAの最新GPU「B200」の提供を始めた。B200とH200を一つのシステムで使い分ける“異種混在”に対応し、生成AIの学習から科学技術計算まで、国内発の計算基盤を太くする一手と映る。
異種混在がひらく計算の選択肢
同社によれば、さくらONEはNVIDIA B200 GPUを最大384基、H200 GPUを最大440基まで束ね、ワークロードごとに計算ノードを選べる構成をとる。生成AIやLLMの学習に強みを持つB200と、科学技術計算で安定した性能を出しやすいH200を並走させ、同一ストレージを共有する前提で運用を設計したという。用途に応じた割り当てで、学習と推論、シミュレーションの混在運用をねらう姿が浮かぶ。
計算資源は単なる箱ではない。さくらONEはジョブスケジューラやアカウント管理、障害時のノード交換までを含むマネージドサービスとして提供され、HPC向けのコンテナ環境も持ち込みやすい構成に再設計したと説明する。利用は最低30日から1日単位で切れるため、実証から段階的なスケールまで時間軸に沿って組み立てやすい。研究室や企業の現場で、計算計画に柔軟さをもたらす狙いがにじむ。
データセンター運用の面でも、B200は1基あたり1000W、H200は700Wの“フルパワー”を想定した電力・冷却で動かす設計とした点を強調する。AIの大規模学習では、電力制約が性能を左右する局面が多い。ハードと施設の両輪で余力を確保し、ピーク性能を引き出す姿勢がうかがえる。現時点で確認されている範囲では、同社の現場ノウハウを前提にした運用最適化が柱になっているとみられる。
石狩から広がる計算供給、計画の現在地
同社はAI計算資源の安定供給を掲げ、段階的な投資計画を走らせている。第一段階ではH100を中心に数千基規模を整備し、現在進行中の第二段階では総GPU数1万基、総計算性能18.9EFLOPSへの到達を見込むと説明する。石狩データセンターではコンテナ型の新棟を立ち上げ、H200とB200を順次増設。現時点ではH200が1000基超、B200も数百基を設置済みで、B200は1100基規模の増強を予定するという。計画値であることを踏まえつつも、足元のペースは速い。
さくらONEの原型は、医療分野の生成AI研究を支えるために構築した自社クラスターにあると同社は語る。国家プロジェクトであるSIP第3期では、医療・ヘルスケア領域で生成AI基盤の整備が進み、公開シンポジウムも重ねられてきた。こうした公的研究の要請に応じて設計した技術要素を再構成し、商用に転じたのが今のさくらONEという位置づけだ。政策と現場の需要に接続する“回路”を国内で作る意図が透ける。
計算力の客観指標でも存在感を示しつつある。同社のクラスターは2025年6月のTOP500で世界49位に入ったと社内説明では位置づけられており、次回のエントリーも視野に入れるという。ランキングの上下はあくまで瞬間風速にすぎないが、継続的な設備更新と運用改善の手応えを示すシグナルにはなる。国内での安定調達と一貫運用が、研究開発の時間価値を押し上げる構図が広がっていると映る。
需要のうねりと国産基盤への視線
市場の体感速度は予想を超えた。同社のAI基盤担当は「当初は学習需要が先行し、その後に推論へ流れる」との見立てだったが、生成AIの実装が一気に本格化し、学習と推論の双方が同時並行で拡大したと振り返る。事業者の参入も加速し、玉石混交の中で、信頼性や品質、価格に敏感な国内組織からは国産プラットフォームへの要求が一段と厳しくなっている。供給側の体制強化は必然といえる。
同社は2025年8月にAI事業推進室を新設し、戦略から開発、営業までを一気通貫で束ねた。クラウド側では推論API基盤「さくらのAI Engine」を9月に一般提供し、学習側ではH200を載せた初期のさくらONEを同月に立ち上げたうえで、10月にB200モデルを新設した流れだ。推論ニーズの肥大と学習の高難度化という二つの潮に対し、サービス群を素早くそろえる“面”の戦いに踏み込んだといえる。
B200とH200の“使い分け”は、単に新旧を並べる発想ではない。モデルの規模やトークナイザ、並列方式、バッチ設計といった実装の癖に応じ、より相性のよいGPUを選ぶ判断を現場に委ねる仕掛けである。電力と冷却の枠も含め、国内の設備でどれだけピークを持続できるかが差になる。現時点で確認されている範囲では、さくらONEはその選択肢を増やす役割を担い始めた。次の学習と次の推論へ、計算の道路をどう太くするかが問われている。