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勝山市は2025年11月8日 午前10時ごろ、市内の工場敷地内に出没したクマ1頭に対し、緊急銃猟で発砲して駆除したと明らかにした。けが人は確認されていない。県内の緊急銃猟による駆除は、同市で10月に実施された事案に続いて2例目となる。市は個体や経緯の詳しい情報を確認している。
工場敷地での判断と経緯
市によると、7日夜に勝山署から目撃情報が寄せられ、関係機関が周辺を警戒しながら捜索を続けた。8日朝、工場の敷地内でクマ1頭を確認し、周辺の安全確保を進めた上で、同日午前10時台に緊急銃猟を実施して駆除したという。現場での人的被害は把握されていない。
緊急銃猟は、市街地などでクマが人に危険を及ぼすおそれが高いと判断された際に、市町村が銃猟を委託できる制度だ。住宅地への侵入の恐れや、銃以外では的確な捕獲が難しい状況などを総合して運用される。実施前には退避や立ち入り制限など、周辺の安全確保が前提となる。
現時点で確認されている範囲では、出没は工場敷地内で、頭数は1頭のみとされる。通報から駆除までの時系列や出没ルート、個体の性別や体長などは、市が関係機関とともに整理している。新たな目撃につながる痕跡がないかも点検が続いている。
広がる市街地の対応と制度の位置づけ
この秋、勝山市では緊急銃猟の運用が相次いでいる。前回は市街地の空き家敷地に親子のクマが現れ、近接する保育施設の安全確保を最優先に駆除が行われた。県内では初の運用となり、通学・通園時間帯の対応手順の確認や、立ち入り規制の導線づくりが検証課題として残った。
制度自体は法改正を背景に始まり、9月の導入以降、自治体と警察、猟友会が連携して訓練や手順の見直しを進めてきた。住宅が近接する環境での射線管理、退避誘導、記録のあり方までが対象で、今回の判断にもそうした準備が反映されたとみられる。実務の蓄積が地域の安全度を左右する。
一方で、人里での出没は季節や餌環境の影響を受けやすく、警戒が続く。対策は現場ごとに異なり、同じ制度でも最適解は一様ではない。市は前回の検証を踏まえ、職員配置や広報手段の更新を進めており、今回の事案も今後の運用改善につながると受け止められる。
住民への影響と今後の備え
周辺ではしばらく見回りが続く見込みだ。クマの痕跡や姿を見つけた場合は近づかず、静かに離れて市役所や警察に連絡する。通報時は場所や時間、頭数、様子を伝えると現場対応が早まる。屋外での作業は複数人で行い、早朝や薄暮の時間帯は特に注意を払い、音で存在を知らせるのが望ましい。
事業所や住宅では、生ごみや果樹の実、生け垣の落果など、誘引物を放置しないことが重要だ。工場や倉庫の敷地でも出入り口の施錠や外周の死角確認を徹底し、従業員への情報共有をこまめに行う。目撃情報が入った際は無理に追い払わず、指定された導線からの退避を優先したい。
現場の緊張が解けると、工場の敷地には普段の足音が戻った。残るのは誘導に使われたコーンと、記録用の白いテープだけだ。街の動きはいつも通りに見えても、次の備えはもう始まっている。小さな確認の積み重ねが、次の1件を未然に防ぐ力になる。
