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通知音が重なったのは、11月9日15:00頃から10日2:05頃にかけてだという。サッカー日本代表の中村敬斗選手に、SNS(交流サイト)のダイレクトメッセージが相次いだ。千葉県警我孫子署は14日、埼玉県内の自称フリージャーナリスト川野美由紀容疑者(65)をストーカー規制法違反容疑で逮捕した。面識のない相手に繰り返し好意や性的関係を求める文面が届いたとされ、オンライン上の「つきまとい」が刑事事件として扱われた形だ。
画面の向こうで続いた10時間
捜査関係の説明では、メッセージの送信は短時間の衝動ではなく、約10時間にわたり断続的に続いたとみられる。受け手のスマートフォンには、通知のたびに小さな振動や音が積み重なったはずだ。文面には強い好意の表明に加え、性的な関係を求める表現が含まれていたという。公開空間ではなく、1対1で閉じた連絡手段を使う点に、プレッシャーの質の違いがある。
ダイレクトメッセージは、送信者にとっては手軽だが、受信側が可視化しにくい負荷を抱えやすい。返信の有無にかかわらず画面に押し寄せ、生活のリズムや競技への集中を乱す要因にもなる。プロ選手であっても、個人の尊厳と安心は他の誰とも変わらない。匿名性の高さや即時性は、関係のない第三者にとっても事態の深刻さを見えにくくする。
今回のケースでは、メッセージの内容と頻度が「つきまとい等」に該当すると判断され、刑事手続きへ移った。スポーツの現場は公開性が高い一方で、移動や宿泊の情報が断片的に露出しやすい。心ない連絡が一線を越えるまでの距離は、想像より短いのかもしれない。画面の向こう側で起きているのは、単なる言葉のやり取りではない。
相談が線をつないだ
端緒は、10月に選手側の関係者が我孫子署へ相談したことだった。被害の訴えが早期に上がり、記録化と事実確認が進んだ。捜査は送受信の実態、文面の性質、繰り返し性を丁寧に積み上げる作業である。画面上のデータであっても、日時や回数は痕跡として残る。相談という一歩が、点在する情報を線に変える。
ストーカー規制法(つきまとい等の規制を定める法律)は、従来の待ち伏せや押し掛けだけでなく、継続的な電子的送信も規制対象に含める。SNSの私的メッセージ機能は、閉じた空間ゆえに心理的な圧迫が生まれやすい。行政による警告や禁止命令の前段階でも、危険の兆しがあれば刑事手続きが選択される余地がある。今回の逮捕は、その枠組みが働いたと受け止められる。
女は取り調べに対し、送信の記憶を否認している。罪に問えるかは、送受信の記録や端末の解析など客観的な裏付けが鍵になる。否認は事件の常であり、最終的な認定は司法の場で決まる。事実関係の確定には時間がかかるが、被害側の安全確保は待てない。相談から逮捕へ進んだ一連の流れは、その優先順位を物語っている。
デジタルの距離感を測り直す
オンラインの連絡は、距離を一気に縮める便利さがある。だが、受け手の意思に反して反復されると、距離は逆に脅威へと転じる。特に著名人は発信の窓口が多く、無数の接点が予期せぬ圧力になる。今回の事案は、公開の場ではなく私的空間で「関係」を迫る構図だった。見えにくい圧迫が、可視化された瞬間である。
スポーツは競技者の集中が支える。遠征先や試合前後の微細な時間にも、心を守る余白が要る。ファンの応援は力になるが、境界を越えない節度が前提だ。応援の言葉と、相手の意思を無視した執拗な接触は連続ではない。線引きは単純で、相手の沈黙や拒絶を尊重できるかどうかに尽きる。デジタルでも、礼儀は同じである。
警察統計では、電子的手段を伴う相談や摘発が近年増えている。数の増減だけでは実態を語り尽くせないが、生活の場が画面に重なるほど、対処の初動は早いほどよい。周囲が兆しに気づき、相談の背中を押すことも被害の抑止になる。静かな通知音が重なる前に、線が結ばれる仕組みはすでに動いている。
小さな画面の向こうで、節度の輪郭を改めて描き直す時期に来ている。