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オンラインの決算説明会で、ロケットラボのピーター・ベックCEOがNeutronの初飛行を当初予定から先送りすると明かした。2025年の打ち上げは見送り、最短でも2026年中頃になる見通しだ。初回は実証飛行とし、確実に軌道到達を狙う方針を示した。また米バージニア州ワロップス島の発射施設に機体を2026年第1四半期に搬入する計画も示し、段階を踏んだ立ち上げに舵を切った。
初飛行の見通しと優先順位
発言は2025年11月11日掲載の報道に基づくもので、第3四半期の決算説明会で示された。ベック氏は「期限のために急がない」と強調し、地上試験で得られる知見は飛行前に洗い出すと述べた。初飛行の成功条件を、単なる離床ではなく軌道投入と定めている。工程の意味づけを見直し、開発チームの判断に余白を持たせた形だ。
工程はまずワロップス島の発射施設での受入、統合、各段のホットファイア試験へと進む。初回は顧客ペイロードを載せない実証飛行とし、1段目の回収は2回目以降に移す。洋上回収設備の整備も進めるとしており、試験項目を段階化して確度を上げる狙いだ。時間を分割してでも、失敗の芽を地上で摘む姿勢がにじむ。
この方針のもとでは、主要構体の検証、統合、規制手続きまでを前倒しなく終える必要がある。現時点の見立てでは、打ち上げの最短時期は2026年の夏ごろとなる。延長は短期の痛手だが、初回からの軌道到達を最優先に据えることで、後続機の立ち上げを滑らかにする狙いが透けて見える。
Neutronが目指す設計思想
Neutronは全高43mで、先端部のフェアリング（衛星を覆うカバー）径は5mだ。特徴はこのフェアリングを1段目に固定し、左右に開閉して内部に2段目とペイロードを抱え込む“キャプティブ”構成にある。1段目は着陸脚を備え、再使用を前提に設計されている。運用のたびに同じ外皮を使えることが、整備の簡素化につながる。
推進系は液体酸素とメタンを用いる新型のArchimedesエンジンで、1段目に9基、2段目に1基を搭載する。公表値では低軌道（地球低軌道のこと）に13トン、惑星間への遷移軌道に1.5トンを送り込む能力を持つ。フェアリングと1段目を一体再使用する思想は、回収後の検査点数を抑え、旋回時間の短縮にも寄与しうる。
小型機Electronで培った反復運用の手触りを土台に、より大きな衛星群の配備や深宇宙のミッションを射程に入れる設計だ。中型域の競争は厳しいが、機体の整備性と打ち上げ頻度の両立を軸にコスト構造の最適化を図る姿勢がある。初回の門を高く置く判断は、その後の量産運用を見据えた投資と位置づけられる。
開発の現在地とこれから
社内では現在、主要コンポーネントの受入試験や構造試験、段間の結合確認など“厚みのある”検証段階にあるという。これらを終えた後、発射場での統合作業、各段のホットファイア、発射前総合訓練へと進む。いずれも初回成功率を押し上げるための必須工程であり、スケジュールより品質を優先する判断と整合的だ。
開発費は当初見積もりからの増加が示されているが、初回から軌道到達を狙う選択は、回収と再使用の立ち上げを見据えた全体最適の一部でもある。延長後の期限は長く映るが、運用期の安定性と信頼性が担保されれば、商業顧客の計画に返って利点をもたらす。焦らず積み上げる姿勢が、次の夏へ向けて機体の輪郭を静かに確かなものにしていく。
