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スマート農業の土俵に、モビリティやIT、精密機械の企業が次々と足を踏み入れている。背景には、国が新設した認定制度と金融・税制の後押しがある。人手が薄い現場で、収穫ロボットや受粉ドローン、草刈りロボットが静かに動き始めた。農業の外からやって来た知見が、営みのリズムを少しずつ変えつつある。
広がる異業種の波、法の後押し
農林水産省はスマート農業技術活用促進法を施行し、技術普及と導入を両輪で回す認定制度を走らせた。制度は「開発供給実施計画」と「生産方式革新実施計画」の二本立てで、認定を受ければ資金や税制の特例にアクセスできる。制度設計の狙いは、現場に技術が届くまでの距離を縮めることにある。法の運用に合わせ、基本方針や申請の手引きも整備され、国は説明会や伴走支援で裾野を広げている。2024年10月1日に申請受付が始まり、仕組みは一気に動き出した。
認定の内訳を見ると、農機の大手だけでなく、自動車部品や電子機器の企業、大学や研究機関も名を連ねる。開発供給実施計画の認定は2025年9月19日時点で43件に達し、果樹の自動収穫から環境制御、除草・防除までテーマは幅広い。金融・税制の優遇に加え、研究開発設備の共用といった実効的な支援が、技術の試作から量産、普及へと橋をかける。制度が掲げるのは、開発と普及の好循環だ。
ロボットとドローン、現場で動き出す
異業種の参入を象徴するのが、デンソーが手がける房取りミニトマトの全自動収穫ロボットだ。AIが熟度を見極め、成熟した房だけを選んで刈り取る。ハウス内を自律走行し、状況に応じてレーンを切り替え、収穫箱の交換までこなす。夜間も動ける耐環境の設計で、作業が途切れない。自動車分野で磨いたセンシングや安全走行の技術が、農温室という別世界で呼吸するように働く。2024年5月13日の発表では、欧州での受注開始が示され、グローバル展開の視界も開けた。
温室の空間だけが舞台ではない。ピクシーダストテクノロジーズは、圃場の状態を仮想空間に再現するデジタルツインを中核に、小型の自動航行受粉ドローンと自律走行の害虫吸引ロボットの開発計画で認定を受けた。遠隔から環境モニタリングと機体制御をつなぎ、作物の生育ステージや気象条件に合わせて作業を差し込む構想である。受粉と害虫防除という日常の細かな作業を、データと機械で静かに置き換える。農地の広さや生産者の年齢構成に縛られない運用像が見えてくる。
傾斜地の草刈りも、自動で
中山間地では、草刈りの負担が作業計画を重くする。東京都足立区のユニックは、クローラーの駆動技術を生かし、急なのり面に対応する電動草刈りロボットの開発計画で認定を受けた。最大45度の法面でも踏ん張り、草丈1メートルを超える雑草に挑む。遠隔運転と自動運転の切り替えで、危険な場所の作業を人から機械へと移す。目が届きにくい保全の領域へ、ロボットが分け入る格好だ。2025年9月19日にこの計画が新たに認められ、現場での実装が加速する。
同計画が掲げるのは、草刈りの属人性を減らし、稼働率を安定させることだ。労働時間の削減目標は大きく、のり面や畦畔の保全にとどまらず、水田の除草や周辺の景観管理にも波及効果を見込む。機体の設計は頑丈さと安全に振り、遠隔監視の仕組みを重ねる。中山間地の作業は天候や地形に左右されやすいが、ロボットが「行ける場所」を広げれば、営農の選択肢は増える。地元の作業受託や集落の維持にも、静かに効いてくる。
顔ぶれの多様化が変えるもの
リストをたどると、ヤンマーホールディングスが果樹の収穫ロボットを計画し、大学は園地向けの自動機や双幹苗木を組み合わせた供給に踏み込む。フタバ産業はレーザー除草と害虫防除のロボット、TOPPANデジタルは選別から包装までの自動化装置に挑む。畑や温室、畦畔、果樹園、酪農の現場まで、技術の射程はじわりと延びる。製造業の「安全」「品質」「自動化」の文法が、作物という生きものを扱う現場に持ち込まれ、農の時間感覚と摺り合わせを始めた。
制度は、開発側と使い手の間にある距離を詰めるための道具でしかない。だが、認定という共通の基準が可視化されることで、金融機関や自治体、研究機関が動きやすくなる。生産者にとっては、導入時の不安を減らし、賃借や共同利用の形も描きやすくなる。現時点で確認できる範囲でも、異業種の知見の導入は確かに進んでいる。次に問われるのは、大小さまざまな農場が自分のやり方に合わせて技術を馴染ませ、負担の軽減と収量の安定という実をどう結ぶかだ。制度はレールを敷いた。走らせるのは現場の意思と工夫である。