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閉幕まで残り一週間。夜の会場に灯がともると、東西ゲートのあたりで何度も振り返る人の列が静かに伸びる。大屋根リングを背に最後の一枚を収め、名残惜しそうに歩き出す姿が絶えない。SNSには会期延長を求める声も並ぶが、国際条約に基づく運営で日程は動かない。2025年4月13日に始まったこの博覧会は、10月13日に終幕を迎える。いま、早くも「万博ロス」の気配が広がっている。
別れを惜しむ夜に、ささやかな余韻が残る
2025年10月6日の夜、会場の風は少し冷たかった。東側ゲートでは、帰路につく家族が足を止め、振り返ってリングの光を見上げる。高校生グループは「次はいつ来られるだろう」と言い合いながら、自撮りの角度を確かめている。西側では、集めたスタンプを友人と見せ合い、互いのスマホで撮りあいを終えると、軽く会釈して散っていく。笑い声もため息も混じる時間帯だが、全体に落ち着いた名残の空気が漂う。
会場内のショップでは記念グッズの棚がにぎわい、閉幕後に思い出を語り合うイベントの案内に人だかりができる。予約ページの一部では、希望日時が埋まりつつあるという話も聞こえる。帰り際の来場者は「最後に見たいのは夜のリング」と口をそろえ、照明がゆっくりと色を変える瞬間に合わせて足を止める。別れの儀式のように、同じ場所で二度三度と振り返る人が多いのが印象的だ。偶然の一致というより、会場全体の動線が記憶を刻むように設計されていたからだと映る。
延長は可能か──条約と承認が縛る日程
SNSには「もう少し続けてほしい」という投稿が相次ぐ。しかし、国際博覧会条約の枠組みで実施される登録博覧会は、会期を6週間以上6か月以内とする取り決めがある。大阪・関西万博はその登録博に位置づけられ、日本政府は博覧会国際事務局の承認のもとで開催している。公式の開催期間は2025年4月13日から10月13日までで、最長で6か月という上限にちょうど重なる設定だ。1日でも延ばせば上限を超えるため、延長は制度上成立しないとみられる。
会期の変更は、仮に技術的・運営的に望まれても、国際的な承認プロセスと条約上の要件に直結する。登録の枠から離れる変更は実務的に困難で、各国パビリオンや来場者のビザ、輸送・保険などの前提も崩れかねない。結果として、終幕日は動かない「基準点」になる。会場の現場に広がる名残惜しさと、制度の硬さが正面から出会う場面だが、国際合意のもとに運営される催しである以上、この日程は揺るがないと映る。
SNSの熱と行政の説明、その距離感
2025年9月24日、吉村洋文知事はSNSで延長を求める声に触れ、国際条約で定めがあるため難しいと説明した。投稿欄には賛同と落胆が交錯し、「せめて週末だけでも」という提案や、「次の機会に」という前向きな言葉も並んだ。誰に有利なのか、偶然なのか必然なのか。問いは尽きないが、現時点で確認されている範囲では、政府と主催者が示すスケジュールは変わらない。会場のスタッフは「最後の一週間を安全に、気持ちよく送り出したい」と語り、運営は終幕に向けて手綱を締める。
一方で、終わりが見えるほど記憶は濃くなる。夜のゲートで同じ方角を振り返る人々の姿がそれを物語る。延長はできない──その確固たる線引きがあるからこそ、最後の7日間は貴重だ。会場で過ごす一時間、リングの下で交わす一言、帰り道でふと取り出すチケットの紙片。小さな断片が積み重なり、万博の輪郭を残していく。終幕後に続くのは空白ではない。街の生活のなかで語り直される時間であり、そこにこそ万博の余韻が広がっていく。