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山腹が砕ける音の直後、長さ758mの橋桁が一気に消えた。四川省馬爾康市の紅旗橋が、開通から数か月で一部崩落した。前日に斜面の変形や路面の亀裂が見つかり、通行は停止済みだった。人的被害は確認されていないが、地滑りを誘因とする今回の崩落は、山岳地帯を貫く大型インフラの「つくる」と「守る」の均衡に、改めて難しさを突きつけている。
何が起きたのか
崩落が起きたのは2025年11月11日。現場は中国内陸とチベットを結ぶ国道317号線(山岳部を横断する幹線)の橋梁区間だ。新設橋の一部が山側から崩れ、川面に土煙が立ちのぼった。建設は地元大手の四川路橋集団が担い、地域の物流動脈として期待を集めていた。通行止めが奏功し、死傷者は報告されていない。
前兆は10日に現れた。橋の右岸側で斜面や路面の亀裂が確認され、当局は直ちに交通を遮断し、夜までに取り残された車両の退避を完了した。巡回と通報の流れが機能したことで、崩落の瞬間に現場に車列がいる事態は回避された。警告標識と分流措置も同時に敷かれ、無断立ち入りは厳しく制限された。
当局は、山体の変形が進んだことで地滑りが発生し、引橋(橋本体と陸上部をつなぐ部分)と路盤が巻き込まれたと説明している。原因の詳しい調査は続いており、施工上の欠陥の有無は現時点で断定していない。復旧や再開時期も示されておらず、幹線の交通は当面、迂回路に頼る状況が続く見通しだ。
山が動く土地で橋を守る
痕跡が語るのは、山岳インフラ特有の脆さである。急峻な斜面と長大橋が隣り合う地域では、風化や降雨、凍結融解などが時間差で効き、斜面の安定性が季節とともに揺れる。今回のように山側の変位が先に現れる場合、橋自体よりも周辺地盤の微小な変化をどう素早く捉えるかが、日常の保守の焦点になる。
有効とされるのがSHM(構造ヘルスモニタリング、構造物の健全性を常時監視する仕組み)だ。橋桁や橋台のひずみ、周辺斜面の傾斜や間隙水圧を常時計測し、しきい値を超えたときに即時に通行規制へ移す。今回、前日の遮断が人的被害を防いだ事実は、モニタリングと運用判断が連動したときの効果を示しているように見える。
ただ、監視の網を細かくするだけでは足りない。貯水や排水の管理、法面補強の維持、工事後の地質再評価など、時間とともに変化する外力を前提に「計画→施工→運用」の循環を回し続ける体制が要る。工期やコストの短縮と、安全余裕の確保はしばしばせめぎ合うが、山が動く土地では後者を厚く取る設計思想が求められる。
揺らぐ信頼と、残った手がかり
大型インフラの安全監督に向けられる視線は厳しさを増している。西部の山岳地帯では長大橋やトンネルの整備が続く一方、今年8月には青海省で建設中の橋が崩落し、死者を伴う事故となった。相次ぐ事例は、急ピッチの整備が地形リスクとどう折り合うのかという根源的な問いを、社会に突きつけている。
一方で、今回の現場対応は重要な示唆を残した。斜面と路面の異常を捉え、通行を事前に止め、退避と封鎖を徹底した結果、人的被害は生まれなかった。危険をゼロにできなくとも、兆候の段階で交通を止める決断が機能すれば、被害の規模は抑えられる。インフラは、計測と運用の「地味な強さ」で守られる。
投資の規模や完成の早さより、運用の粘りが試されている。山は静かに、しかし確かに動く。その前提に合わせて橋を見守る術を、現場から積み上げていく段階にある。