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秋晴れの奈良に厳戒の空気が張りつめた。2025年10月28日、安倍晋三元首相の銃撃事件をめぐる山上徹也被告の裁判員裁判が奈良地裁で始まった。検察は冒頭陳述で、被告が母親の入信を契機に教団へ強い恨みを抱いたと指摘した。白昼の銃撃から3年余、動機と責任の線引きが社会に問われる局面に入ったと映る。
厳戒の奈良地裁で始まった審理
朝の奈良公園には傍聴券を求める列が早くから伸び、周辺は交通規制と所持品検査で張り詰めた空気に包まれた。金属探知や持ち込み制限が重ねられ、庁舎の動線は一方通行で統制された。抽選に漏れた人々が法廷の行方をスマートフォンで追う姿が並び、注目の大きさを物語っていた。
初公判は2025年10月28日 14:00に開廷した。冒頭で検察が起訴状を朗読し、続いて被告と弁護側が起訴内容への意見を述べ、検察の冒頭陳述が始まった。審理は裁判官3人と裁判員6人で進み、警備は庁舎の内外で二重三重に敷かれた。法廷の空気は硬く、咳払いすら響く緊張感があった。
事件は2022年7月8日 11:30ごろ、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で参院選の応援演説中だった元首相に向けて、被告が手製の銃を発砲し死亡させたとされるものだ。公衆の面前での致死行為という性質から、警備体制や第三者危険の評価も審理の射程に入るとみられる。
検察が描いた「恨み」の連鎖
冒頭陳述で検察は、被告の母親が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に入信し高額献金を続けた結果、家庭が安息の場ではなくなったと述べた。職を転々とする中で「思い描いた人生が進まないのは入信のせいだ」との認識が強まったとし、動機の基盤に長期の不満と恨みが積み重なった構図を示した。
2015年に兄が自殺した後、教団への敵意が一段と強まったとも指摘した。検察によれば、被告は教団の最高幹部の襲撃を計画し、火炎瓶を製造する段階に踏み込んだが、より確実な攻撃には拳銃が必要だと考えるようになったという。標的と手段が変容していく過程が、陳述から浮かぶ。
その後、被告は複数の手製銃を作り、試射を繰り返したとされる。一部報道では最大で10丁に及んだとの指摘もあるが、数量や仕様の詳細は今後の証拠調べで詰められるとみられる。検察は準備の継続性と危険性を強調し、計画性の強さを量刑上の要素として位置づけた。
争点とこれからの見通し
被告は殺人のほか、銃砲刀剣類所持等取締法違反、武器等製造法違反、火薬類取締法違反、建造物損壊などで起訴されている。争点は、動機の成り立ちと計画性、第三者危険の評価、そして責任の程度に及ぶ。検察は社会的影響の大きさを強調し、弁護側は背景事情や意思決定の過程に光を当てるとみられる。
公判期日は予備日を含めて最大19回が指定された。証人尋問には被告の母親や宗教学者のほか、検察請求の目撃者らを含む計12人が臨む構成だ。被告人質問は11月以降に予定され、動機の細部や準備行為の具体像、リスク認識の程度が言葉として立ち上がってくるかが焦点になる。
結審は12月の見通しで、判決は2026年1月21日に言い渡される予定とされる。量刑判断では、周到な準備と公共の場での実行という危険性がどう評価されるか、また背景事情がどこまで参酌されるかが鍵になる。厳戒の法廷で始まった長い審理は、社会の受け止めも二分しつつある。
