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政府は2025年11月11日、持ち物に付けて位置を探せる紛失防止タグ(持ち物に装着し、スマホで所在を追える小型端末)の無断取り付けや位置取得を禁じるストーカー規制法(ストーカー行為等の規制等に関する法律)改正案を閣議決定した。警察が被害申告なしでも職権で警告できる規定も盛り込み、広がるデジタル追跡の被害に先手を打つ狙いだ。政府は臨時国会に改正案を提出し、早期成立を目指すとしている。
広がった追跡リスクに線を引く
紛失防止タグは手頃な価格と携帯性から普及が進み、置き忘れ対策としては有効だが、悪用時は被害者が気づきにくい。GPS(全地球測位システム)機器の悪用は過去の改正で規制対象になっていた一方、タグは対象外だった。改正案はこの空白を埋め、無断装着とそこからの位置取得そのものを禁じることで、物理的な尾行と同等の侵害に法の網をかける。
車体の裏やバッグの内側など、接触の痕跡が残りにくい場所に小型端末を潜ませるやり口は、発見の遅れが被害拡大を招く。端末やOS側も注意喚起機能を備えつつあるが、法が「許されない線」を明確にすることで、メーカーの対策と捜査の初動がかみ合いやすくなる。今回の改正は、技術が生む便利さと脆弱さの境界を引き直す作業でもある。
タグは多くが近距離通信の電波を周囲のスマホ網に乗せて位置を推定する。個人の所有物にこっそり付けられれば、自宅や通勤経路が容易に浮かぶ。改正案は「取り付け」と「位置取得」を分けて禁じ、行為の段階で歯止めをかける構えだ。既存のGPS機器規制と合わせ、追跡手段の差異に左右されない仕組みへと近づく。
警告の職権化で初動を早く
改正案は、警察による「警告」を職権で出せるようにする。従来、より重い行政処分である「禁止命令」は警察権限で出せたが、証拠収集に時間を要した。数日で動ける警告に職権を及ぼすことで、被害申告がためらわれる局面でも、現場に早く介入できる余地が広がる。見過ごした一手の遅れが二次被害を招いた苦い経験が、制度設計の背景にある。
職権化は迅速さの裏で、運用の透明性も問われる。警告の理由と内容を記録し、当事者への通知を徹底することが、濫用への抑えになる。警告で止め、禁止命令で縛り、刑事手続へつなぐという段階の設計が、デジタル機器による追跡を含む幅広い事案で機能するかが焦点だ。川崎市での殺害事件を受けた見直しという文脈も、初動強化の必要性を裏づけている。
周辺対策と社会側の備え
改正案は探偵業者らの情報提供にも目配りする。ストーカー行為のおそれがある人物への個人情報提供を控えるよう、警察が求められる規定を新たに設け、違反時は行政処分の対象となる。データ仲介や調査の名目で流通する断片的な個人情報が、追跡の“最後のピース”になり得る現実に、制度的なブレーキをかける狙いだ。
被害者の雇用主には、勤務形態の配慮や自社サイトの情報削除などの取り組みが努力義務として明記される。出社パターンの固定化や顔写真の露出は、追跡を容易にする場合がある。社内窓口の整備、柔軟なテレワーク、名簿やSNS連携の見直しなど、職場側の細かな手当てが安全地帯を広げる。法の外側で支える担い手をどう増やすかが問われている。
制度は枠組みを与えるにすぎない。端末の検知機能の高度化、利用者教育、自治体や支援団体との連携がかみ合って、初めて抑止は厚みを増す。小さな端末に翻弄される日常を手放すために、現場で効く運用が静かに積み上がっていく。
