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神戸市立工業高等専門学校発のスタートアップ、Universal Hands(神戸市西区)は、港の岸壁などにこびりついたフジツボを一気にこそぎ落とす水中ドローンを開発した。高圧で海水を噴射して生じる無数の泡が消える瞬間の衝撃で貝類をはがし、本体は構造物に吸い付いて作業する仕組みだ。実証では人手の約5倍の速度で除去できたといい、港湾施設や洋上風力、船体の保守現場の負担軽減をねらう。
現場の「こびりつき仕事」をロボットに任せる
海のインフラでは、鋼製の桟橋や護岸、係留施設の水面下に付着したフジツボが長年の悩みとなってきた。燃費悪化や腐食の進行を招く一方、除去は潜水作業員がスクレーパーで削り取る重労働に頼る場面が多く、安全確保と人手不足が課題になっている。フジツボ対策は世界的にも研究が進み、環境負荷の少ない付着阻害剤の開発が進められているが、既に付いた殻をどう落とすかという現場の仕事は残っていた。
Universal Hands が手掛ける水中吸着ドローンは、この「後始末」を省力化することを狙う。機体の底部には、神戸高専の研究から生まれた万能真空吸着グリッパーを応用した装置を備え、コンクリートや鋼板の面に張り付いたまま移動できる。先端ノズルからは高圧の海水を吹き出し、発生した微細な気泡がつぶれる際の衝撃を利用して、殻を基材から引きはがす。表面を削り過ぎないため、構造物の健全性を確認する非破壊検査技術との親和性も高いとされる。
同社によれば、試験では人手作業に比べておよそ5倍の面積を同じ時間で処理できたという。遠隔操作で水中作業を進められるため、作業船上から少人数で運用し、潜水員は点検や高度な判断が必要な箇所に集中させる運用も描ける。今後は、付着状況に応じて噴射条件を自動調整したり、カメラ画像をAIで解析して清掃すべきエリアを選び出したりと、清掃と検査を一体化したシステムへの発展が期待される。
港湾インフラから洋上風力へ、広がる応用と残る課題
水中吸着ドローンは、もともと港湾鋼構造物の点検効率化を目的に開発が始まり、国土交通省の「中小企業イノベーション創出推進事業」の補助対象にも選ばれた。老朽化が進む桟橋の裏側や海中部材を高頻度に診断するニーズが高まるなか、画像撮影と厚さ計測を自動で行う基盤として位置づけられている。神戸高専の実験水槽や神戸港での実証を通じて性能を磨き、3年以内の商用化を目標にしているという。
一方で、同じ吸着ドローン技術は「検査」だけでなく「清掃」にも転用し得る。神戸市内の産業支援機関の紹介では、港に入る船の船底洗浄や、洋上風力発電の水中部分のメンテナンスへの応用が具体例として挙げられている。広島県では別のスタートアップが、幼生段階のフジツボを自律型ドローンで事前に除去するシステムを開発しており、海洋インフラの維持をロボットで担う動きが各地で広がりつつある。
ただ、清掃技術の高度化は環境対策とセットで考える必要がある。従来の防汚塗料には有害物質を含むものも多く、近年は毒性の低い付着阻害剤の合成や、新しい化合物の探索が大学や自治体の研究チームによって進められている。機械的にフジツボをはがす今回の手法は、薬剤に頼らないという意味で注目される一方、剥離した生物の扱いやエネルギー消費など、運用面の検証も欠かせない。海のインフラが増えるなか、「人と環境のどちらの負担も増やさない維持管理」をどう実現するかが、今後の議論の焦点になりそうだ。
