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22日朝、福島県会津美里町沼田の住宅で、家庭ごみを出しに玄関を開けた80代女性がクマに襲われた。叫び声を聞き外へ出た80代の夫も首付近をひっかかれた。2人は顔などに重傷を負ったが命に別条はない。体長約1メートルのクマは南の山林へ逃走し、警察が周辺へ注意を呼びかけている。生活圏のすぐ脇まで野生が迫る現実が浮かぶ。
早朝の玄関先で起きたこと
薄い朝霧が残る住宅地で、玄関扉の先に黒い影が立っていたという。女性はごみ袋を手に一歩踏み出した瞬間、クマと鉢合わせた。ほとばしる悲鳴は近隣に響き、静けさを裂いた。現場は田畑と林が入り混じる集落で、生活圏と山の境目が近い土地柄である。日常の動線と野生の通り道が交差した。
通報が入ったのは2025年10月22日 7:30ごろ。近所の住民が110番し、救急と警察が駆けつけた。会津若松署によれば、被害に遭ったのは80代の夫婦で、妻は顔などを深く切るけが、夫も首周辺をひっかかれた。2人は病院へ搬送され、意識はあり、命に別条はないとされる。突然の遭遇が重い傷を残した。
クマは体長約1メートルの1頭で、騒動ののち南側の山林へ姿を消したとみられる。現時点で確認されている範囲では捕獲などの続報はなく、警察は周辺住民に外出時の警戒を促している。特に人通りの少ない時間帯や、家の死角となる場所では注意が要る。集落に緊張が広がっている。
広がる出没と県の警報
県内では今季、クマの目撃と人身被害が増えている。福島県は9月11日から12月15日まで、会津・中通りに「ツキノワグマ出没警報」、浜通りに「注意報」を発令中だ。目撃件数は過去最多だった前年度をすでに上回る勢いとされ、近年に例のない非常事態との認識を示す。警戒の長期化が避けられないと映る。
背景には、ブナなど堅果類の凶作があると指摘されている。餌が乏しくなる秋は、クマが行動域を広げ、里や住宅地の縁まで降りてくる可能性が高まる。とりわけ朝夕は活動が活発で、人の生活時間帯と重なる。玄関先や畑、通学路といった日常の場で、遭遇リスクが高まっている実情がある。
県は、人身事故の連鎖を抑えるには日々の行動変容が鍵だと訴える。複数人での行動、鈴やラジオの携行、目撃マップの確認、生ごみを屋外に置かないといった基本の徹底が柱である。山と暮らしが隣り合う会津では、小さな油断が呼び水になりうる。地域ぐるみの目配りが求められている。
命を守るために、いまできる備え
今回のように自宅敷地で遭遇するケースでは、扉を開ける前の確認が命綱になる。周囲の物音に耳を澄まし、玄関灯や懐中電灯で死角を照らし、鈴を鳴らして存在を知らせる。生ごみや果樹、ペットフードなど匂いの源を屋外に置かない工夫も欠かせない。小さな手当ての積み重ねが抑止力になる。
もし遭遇したら、走って背を向けず、落ち着いて距離を取りながら後退するのが基本である。子どもや高齢者がいる家庭では、朝のごみ出しや庭作業を1人で行わず、複数人での行動を習慣化したい。早朝や薄暮の時間帯は特に注意が必要で、いつもと違う気配を感じたら無理をしない判断が重要だ。
地域では目撃の共有が力になる。自治体の防災メールや掲示板、学校からの連絡網を通じて情報を細やかにつなぐ。目撃マップを時々確認し、登下校の見守りや草刈りのタイミングもすり合わせる。警察や自治体の情報が更新されるまでの間は、山際の農道や河川敷などを避ける選択が安全につながる。
