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価格ボードが一斉に緑へ染まった。2025年10月5日のアジア時間、ビットコインが過去最高値を更新し、12万ドル台半ばへ駆け上がった。米政府機関の一部閉鎖を背景に「法定通貨の価値毀損」への警戒が強まり、金と並ぶ逃避先としてのビットコイン買いが勢いづいたかたちだ。米株高や現物型ETFへの資金回帰も背中を押し、リスク選好の連鎖が広がっている。
市場が跳ねた朝、止まらぬ買い気
5日朝、主要取引所の板は厚みを増し、上値の薄さを試すように成行の買いが積み上がった。現時点で確認されている範囲では、ビットコインは一時12万5689ドル近辺まで上昇し、8月14日に付けたそれまでの高値を上回ったとみられる。前日までの持ち合いを上抜けた局面で短期勢の買い戻しも加速した。
米株式相場の切り返しが追い風となり、暗号資産にも資金が回り込んだ。指数連動の裁定やボラティリティ低下を見込む戦略が重なり、上値追いのモメンタムが強まった格好である。テクニカルでも年初来の上昇トレンドは維持され、節目を越えると追随のアルゴが点火した構図が浮かぶ。
6日には一段高の余韻が残り、日中の取引で一時12万5504ドルを付ける場面があった。その後は利益確定と新規買いが交錯し、同日昼時点では12万4千ドル前後でのもみ合いとなった。短期の過熱感は意識されるが、押し目では現物の買いが待ち構えると映る。
節目をまたいだことで、機関投資家のリスク許容度が一段と試される。誰に有利なのか。足の速いフローだけでなく、長期資金の滞留が続くかどうかが次の焦点だ。夏場の高値を上抜いたいま、相場は新たな均衡点を探る。
政府閉鎖が映す「通貨の切り下げ」物語
10月に入り米連邦予算の不透明感が増し、政府機関の一部閉鎖が市場心理を冷やした。一方で、この混乱は別の物語も連れてくる。市場参加者が「通貨価値の切り下げ（debasement）トレード」と呼ぶ動きだ。財政・金融の継続的な緩みを見込む投資家が、法定通貨の購買力低下に備えて金やビットコインへ資金を移す戦略である。
この物語は株式やコモディティにも波及する。金融環境の先行きに不安が残る局面ほど、希少資産の希少性にプレミアムが乗りやすい。金の高止まりとビットコインの高値更新が同時進行する構図は、通貨価値の物語に説得力を与える。資産間の相関は流動的だが、当面はリスク資産同士の“同時高”が意識されやすい。
もっとも、物語が先行し過ぎる局面では巻き戻しも速い。政策交渉の進展や金利の急変は、想定とは逆方向の値動きを連れてくる。高値圏での新規資金は慎重姿勢を崩さず、指値の分散やヘッジの徹底が求められる場面である。偶然の追い風か、必然の潮目か。今週のニュースフローが答えを近づける。
米財政の先行きは単独のテーマでは終わらない。準備通貨としてのドルの位置付け、各国の外貨準備の構成、そして新興国通貨の安定性まで視線が伸びる。ドルの強弱を織り込む過程で、暗号資産の役割を再評価する動きが広がっている。
ETF資金の回帰と「10月相場」の記憶
現物型ビットコインETFへの資金フローは、足もとで純流入へ戻りつつある。現物市場と裁定で結び付く器の存在は、需給面の下支えとして働く。発行体の貸株動向や保有量の増減は、流動性の質を映す鏡でもある。資金の回帰が続けば、需給のタイト化が価格を押し上げる余地は大きい。
季節性にも目を向けたい。過去の統計では10月に相対的に強含みやすいとの指摘が根強い。四半期入りの資金配分や年末の評価を意識したポジション取りが背景にあるとみられる。実需に裏付けられた買いが入れば、短期筋の仕掛けを吸収しながら相場は上値を試す。
波及はビットコインにとどまらない。プルーフ・オブ・ワークとプルーフ・オブ・ステーク、異なる設計を持つ主要通貨へも資金が巡る。とはいえ、上昇の起点はビットコインの流動性とストーリーだ。企業の財務戦略や機関の配分見直しにまで議論が及べば、強気ムードは一段と厚みを増す。
高値圏でのリスクは常に隣り合わせである。政策ニュース、マクロ指標、ETFフローの転換点。どれか一つでも噛み合わなければ調整は速い。相場の主導権は今、買い手が握る。ただし勝負は持久戦に移りつつある。次の材料を待つ間、需給の微妙な綾が価格を左右する。
