配管点検を安全に簡素化　芝浦工大と東京都市大の新手法

芝浦工業大学の細矢直基教授と東京都市大学の矢作修一准教授らの研究チームが、気泡緩衝材をつぶした際の破裂音を「音源」にして配管内部の異物を探す非破壊検査システムを開発した。2025年12月2日に公表した。電力や高価な発生装置を前提とせず、反射して戻る音を解析して位置を割り出すという、現場の安全と手間に焦点を当てた発想だ。

火花も高出力もいらない点検、危険エリアでの選択肢に

プラントや建設現場の配管点検では、装置の持ち込みや配線そのものが負担になりやすい。従来の音響系の非破壊検査は、スピーカーやレーザー誘起プラズマなど「強い音」を出す手段が必要で、狭所や可燃性物質のある環境では運用上の制約が付きまとう。そこで研究チームは、身近で安価な気泡緩衝材を、点検用のインパルス音源として使う道を探った。

仕組みは単純だ。破裂音を配管に入射させ、内部で反射して戻る音をマイクで測り、時間変化を読み解いて異物の位置を推定する。鍵になるのがウェーブレット解析で、ひとことで言うと「いつ、どの周波数の成分が強かったか」を同時に捉える手法である。公表内容では、配管内の異物位置をおよそ2％の誤差で特定できたとしている。

“安い材料”を計測に耐える道具へ、残る検証ポイントは

気泡緩衝材の破裂音は、単に大きいだけではなく、比較的再現性のある短い音として扱える点が強みになる。研究チームは、音圧や周波数帯域などの特性を見比べ、検査に向く種類を選定したという。さらに、気泡の大きさやフィルム厚といった条件を変えることで、音の強度や向きを調整できる可能性にも言及しており、「現場で使える標準音源」に近づける余地がある。

一方で、実装に向けては温度や圧力など環境条件が変わる場面での性能確認が欠かせない。周囲騒音の大きい現場や、材質・曲がりの多い配管でどこまで安定して推定できるかも論点になる。研究チームは携帯型の装置展開も視野に入れるとしており、「つぶす」という日常動作を点検の入口に変える試みが、点検のハードルをどこまで下げられるかが次の焦点だ。

参考・出典

• 気泡緩衝材を潰した時の破裂音「プチッ」で異物を見つける！ ～安全・低コスト・非破壊で異物を検出、環境にも優しい新手法～｜芝浦工業大学
• 気泡緩衝材を潰した時の破裂音「プチッ」で異物を見つける！ ～安全・低コスト・非破壊で異物を検出、環境にも優しい新手法～ | 芝浦工業大学、東京都市大学
• 【芝浦工業大学・東京都市大学】気泡緩衝材を潰した時の破裂音「プチッ」で異物を見つける！～安全・低コスト・非破壊で異物を検出、環境にも優しい新手法～ – 大学プレスセンター
• 気泡緩衝材の「プチッ」音で異物発見　芝浦工業大学と東京都市大学が非破壊検査の新手法開発 – 大学ジャーナルオンライン
• 緩衝材の破裂音で非破壊検査 芝浦工大・都市大が開発 | NEWS SALT（ニュースソルト）