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曇り空のブダペストに「すぐの首脳会談はない」という空気が流れた。米ホワイトハウス高官が「ごく近い将来」の会談見通しを否定し、準備役の米露外相会合も延期されたためだ。ロシアがドンバスの領土割譲を改めて迫ったと伝わる中、欧州首脳は即時停戦と現行戦線を起点とする交渉を支持。和平の足場づくりは続くが、舞台は一転して険路に見える。
ブダペスト構想に漂う失速感
トランプ大統領は先週、プーチン大統領と電話会談し、ゼレンスキー大統領ともワシントンで向き合ったうえで、２週間以内のブダペスト会談を目指すと語っていた。だが、現時点で確認されている範囲では、米露双方とも具体的な日程を示していない。クレムリン報道官は「深い準備が要る」と述べ、時間軸の不透明さをにじませたと映る。
転機は２０日前後の外相協議にあった。ルビオ米国務長官とラブロフ露外相は電話で協議し「生産的」との評価が漏れたが、対面での準備会合は見送られた。首脳会談の地ならしが停滞し始め、ホワイトハウス高官は２２日未明にかけて、首脳会談の早期開催を否定する立場を明確化した。期待は残しつつも、足取りは重いといえる。
一方で、ハンガリーのシーヤールトー外相は「これから厳しい日々が待ち受けている」とＳＮＳに記し、招致国としての難しさを吐露した。ドミトリエフ露特使は「準備は続いている」と投稿し、火を消さない構えを示したが、舞台裏の温度差が浮かぶ。水面下の駆け引きは続くものの、ゴールテープは遠のいたままだとみられる。
外相会合の延期が語るシグナル
延期の背景には、和平の入り口をどこに置くかという溝がある。米側は戦闘を直ちに止め、現在の戦線で凍結して交渉に入る案を押し出す。一方、米当局者筋の説明では、ロシアは最近の非公式文書でドンバスの完全支配を重ねて主張したという。停戦の前提条件に隔たりが残る限り、準備協議の再開は容易でない構図である。
トランプ氏は２１日、記者団に「無駄な会談はしたくない」と語りつつ、「今後２日以内に知らせる」とも付け加えた。首脳会談を交渉の起爆剤にする発想は捨てていないが、譲歩なき再会談は避けたいという計算がにじむ。欧州の上級外交官からは「ロシアの要求が多すぎ、ブダペストで合意に至る見込みがないことが明らかになった」との見立ても出ている。
ロシア側の硬直も重い影を落とす。クレムリンは首脳会談の可能性自体を否定していないが、日時の確定には至らず、「準備に時間を要する」との立場を繰り返す。ドネツク州とルハンスク州を含むドンバスの扱いで後退が見えない以上、米露外相の対面協議を先に進める動機は弱まる。延期は、交渉条件の再設計を迫るシグナルと映る。
欧州の足並みとウクライナの視線
２１日、英国、フランス、ドイツ、ＥＵの首脳らはウクライナと共同声明を発し、即時停戦と「現行の接触線を出発点」にする交渉方針を強く支持した。国境不変更の原則を改めて掲げ、ロシア経済と防衛産業への圧力強化、凍結ロシア資産の活用策の検討を打ち出した点も注目される。欧州は足並みを固め、米国に堅持を求める構図が広がっている。
ただ、ウクライナの同盟国には、譲歩を引き出せないまま再会談に臨むリスクへの警戒も残る。８月のアラスカ会談では停戦合意に届かず、今回は外相レベルの地ならしが頓挫した。現場の兵士にとって一時停戦は命綱であり、同時に戦線凍結は将来の安保設計を縛りかねない。キーウの判断は、戦況と同盟の圧力のはざまで揺れる。
「即時」会談は遠のいたが、誰も公には断念していない。突破口は、停戦の入り口と領土の線引き、そして戦後の安全保障枠組みをどう束ねるかに尽きる。欧州は連携を誓い、ワシントンは成果なき首脳会談を回避したい。モスクワは前提条件の維持に固執する。厳しい日々の先に、現実的な妥協線を描けるのかが問われている。
