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炭火の上でウナギが跳ね、煙が小さな専門店の天井にまとわりつく。東京都内の老舗では、冬のかば焼きシーズンを前に、仕入れ先の動向をいつも以上に気にしている。中央アジアで開かれているワシントン条約の会合で、ニホンウナギを含むウナギ全種の国際取引規制を強める案が否決されたとの知らせが届いたからだ。しかし安堵だけではなく、先行きへの不安も消えていない。
否決でも消えない食卓と現場の不安
今回否決されたのは、EUなどが提案した「Anguilla(ウナギ属)」全種をワシントン条約の付属書2に載せる案だ。対象にはニホンウナギやアメリカウナギなど、世界各地で食用とされる19種前後が含まれるとされる。付属書2に記載されれば、輸出国は資源に悪影響を与えないと判断したうえで許可証を発給する義務を負い、国際取引に事実上の上限がかかる。日本側は、シラスウナギの確保が難しくなれば養殖コストが跳ね上がり、最終的にうな丼の価格に跳ね返ると懸念していた。
ウズベキスタン・サマルカンドで開かれている締約国会議では27日、各国が賛否を表明し、提案は否決された。水産庁の担当者は、資源評価などのデータが十分でなく、科学的根拠が乏しいと各紙の取材に対して説明していると報じられている。FAOの専門家パネルも、提案は付属書2への掲載基準を満たさないとの評価書を公表しており、中国や韓国、アフリカ諸国の一部も同調した。一方で、会期は12月5日まで続き、本会議の場で判断が覆る可能性はわずかに残るため、漁業者や卸売業者の間では「ひと息つきつつも様子見」という空気が漂う。
国際ルールと保全、すれ違う視点
規制強化を求めた側は、乱獲と違法取引が世界のウナギ資源を脅かしていると訴える。欧州ではヨーロッパウナギがすでに付属書2に掲載されているが、それでも密輸が多額の闇ビジネスとなり、資源の回復も十分とはいえないとする指摘がある。だからこそ、欧州連合やパナマなどは、外見で見分けにくいウナギ属を一括して管理しなければ、ある地域で規制しても別の地域に採捕圧が移るだけだと主張してきた。環境団体の一部は、日本やアジア市場の旺盛な需要も国際的な管理の枠組みに組み込むべきだと訴えている。
これに対し、日本やアジアの漁業国は、河川改修やダム建設、気候変動など取引以外の要因こそ資源悪化の主因だと強調する。FAOの専門家グループも、ニホンウナギなどの絶滅リスクは中程度で、域内の管理措置を拡充する方が効果的だと評価している。急激な国際規制が導入されれば、合法的な取引コストだけが上がり、闇市場に流れる量が増えかねないという懸念も示された。日本ではすでに稚魚採捕量の上限やトレーサビリティー制度が整いつつあり、消費者も産地表示や認証に目を向ければ、資源と食文化を守る一助となる。
