大阪大学と愛媛大学 化合物CL5Bでマウス脳血管を短時間開通

血液脳関門を一時的に緩める低分子化合物 CL5Bが安全性の課題に突破口

※記事を視覚化したイメージであり、実際の事象とは異なります。

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マウスの脳の血管が、わずか30分だけゆるむ。その瞬間をモニター越しに見つめながら、大阪大と愛媛大などの研究者たちは、新しい化合物「CL5B」の可能性を確かめていた。血液中の薬が届きにくい脳内へ、この物質を使って安全に成分を送り込めることが、今回の実験で示されたのである。成果をまとめた論文は、2025年10月11日に国際科学誌Journal of Controlled Releaseに掲載された。

薬を脳へ運ぶ“見えない壁”に挑む

脳の血管には、血液中の異物が脳に入り込むのを防ぐ「血液脳関門(BBB)」と呼ばれる仕組みがある。血管の内側を覆う血管内皮細胞がぴったりと並び、わずかな隙間も作らないことで、毒素や病原体から脳を守っている。一方で、この強固な壁は薬もはね返してしまい、脳腫瘍や認知症、てんかんなどの治療薬開発を難しくしてきた。これまでもBBBを開く方法は試みられてきたが、数時間から数日と作用時間が長く、脳のむくみや有害物質の侵入といった副作用が大きな課題だった。

研究チームは、この壁を形づくる鍵の1つである膜たんぱく質「クローディン5」に目を向けた。クローディン5は内皮細胞同士をつなぎ合わせる“のり”の役割を担い、BBBの要となっている。阪大の岡田欣晃教授らは、約9600種類の化合物をふるいにかけ、クローディン5に結合して細胞間の接着を一時的にゆるめる低分子化合物CL5Bを見いだした。合成が容易な小さな分子であるため、体内で素早く分解・排出され、作用時間を30分以内にとどめられる点も特徴だという。

30分だけ開く“扉”が拓く治療薬の可能性

マウスを用いた実験では、CL5Bと既存の薬を同時に投与し、脳血管の変化を詳しく追った。投与後しばらくすると内皮細胞のつなぎ目がわずかに開き、30分ほどで再び閉じる様子が確認された。その短い時間に薬の成分は血液から脳内へと移行し、抗てんかん薬を組み合わせた試験では、てんかんモデルマウスの発作を抑える効果が高まったという。色素や薬物の量を測定した解析からも、CL5Bが脳内への送達量を増やしていることが裏付けられた。

従来はBBBを越えられないことを理由に開発が止まった薬候補も多く、岡田教授は「眠っていた薬を再び生かせるかもしれない」と話す。一方で、実験はまだマウスにとどまり、人で同じように安全に使えるかどうかは分からない。血管生物学が専門の日本医科大・福原茂朋教授は、30分で関門が閉じる点を「脳へのダメージを最小限に抑えうる画期的な性質」と評価しつつ、今後は毒性や投与量などを慎重に確かめる必要があると指摘する。わずかな時間だけ開くこの“扉”が、将来どのような治療に結びつくのか、静かに注目が集まりつつある。

参考・出典

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