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公正取引委員会は2025年12月24日、映画とアニメの制作現場で、クリエイターと発注側の取引がどう行われているかを調べた実態調査の結果を公表した。アニメ分野では、業界関係者や団体へのヒアリング、アンケートを踏まえた報告書も公開され、作品の評価だけでは見えにくい「契約の入り口」が改めて焦点になっている。
「条件が見えないまま走る」取引のひずみ
調査では、発注時に委託費などの取引条件を明示しないまま作業が始まる例や、追加作業に対する代金の不払いが確認された。公取委は、こうした行為が独占禁止法や、2026年1月1日施行の中小受託取引適正化法（取適法）などに違反するおそれがある、という整理を示した。
契約書や発注書が後回しになると、作業範囲が膨らんだときに「どこからが追加か」を合意しにくい。締切前日にリテイクが増えるような場面では、現場は一気に慌ただしくなるが、支払いの話は置き去りになりがちだ。調査結果は、条件の曖昧さが不払いを招き得るという、制作の弱点を照らした。
法改正の追い風と、現場が待つ「次の手」
公取委は報告書の公表と同時に、製作委員会の構成事業者、制作会社、フリーランスに関わる事業者団体などへ内容を周知した。製作委員会は、複数社が出資し、権利や収益を分け合いながら作品を作る枠組みだ。取適法は旧下請法を改め、委託と受託の取引条件の明確化などを通じて保護を強める方向にある。
公取委は今後、今回の調査内容を基に、独禁法や取適法、フリーランス・事業者間取引適正化等法、競争政策上の考え方を示す指針を策定し公表する予定だ。現場にとっては、発注の入口で条件を言語化できるかが分水嶺になる。ルールが整うだけでなく、守らせる運用が追いつくかが次の焦点となる。
