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農林水産省が、コメの「需要に応じた生産」を法律に書き込む検討を進めている。減反を事実上復活させる生産調整だとの批判もある一方で、石破茂前首相の掲げた増産路線から再びかじを戻す形だ。政権交代のたびに変わる国のメッセージの下で、田んぼを守る現場は何を拠り所に将来設計をすべきなのかが問われている。
「増産」から「需要優先」へ、揺れるメッセージに農家の不安
石破政権は、コメ不足と価格高騰を受けて増産にかじを切り、余剰分は輸出にも回す構想を打ち出していた。食料安全保障を強調するこの転換は、長年の減反路線からの決別として歓迎する声もあったが、価格が急落した際のセーフティーネットが不十分だとみる農家も少なくなかった。
そこへ発足した高市早苗政権のもとで、農水省は「国内需要に見合った生産」を政策の柱として再び前面に掲げた。これまでも省令や要領のレベルでは、需要予測に合わせた作付けを促す仕組みが整えられてきたが、今回はその考え方を法律にまで格上げする構想である。
国の方針が「増やせ」と「抑えよ」の間で振れ続ける中、営農計画を立てる農家ほど戸惑いは大きい。数年先の機械更新や担い手確保を考えれば、単年度ごとに変わるシグナルでは対応しきれないからだ。生産調整色が強まるとみる人がいる一方で、急激な増産で再び価格暴落を招く事態だけは避けたいという声も現場にはある。
法制化で「急転換」を縛る狙いと、それでも残る選択肢
今回、「需要に応じた生産」を法律に書き込む狙いとして、政権の顔ぶれが変わってもコメ政策の原則を簡単には動かせないようにする思惑があるとみられる。前政権のように短期間で増産路線へと急ハンドルを切った結果、需給見通しの誤りが価格高騰や混乱を招いたとの反省が、与党内や農水省に共有されつつあるためだ。
一方で、法律に原則を書き込むことは、将来の環境変化への対応を硬直化させるリスクもはらむ。人口減少で国内需要が細るなかでも、輸出や加工用米など新たな市場を育てていく必要がある。その際、「需要」の中身をどう定義し、どこまで海外市場や備蓄政策を織り込むのかは、今後の設計次第だ。
農家や地域にとって重要なのは、増産か抑制かという単純な二者択一ではなく、数年単位で見通せるルールと、価格急変への備えをどう組み合わせるかである。法律で原則を固定化しつつも、地域ごとの作付け選択や、新たな需要を開拓する余地をどこまで残すのか。コメ政策の揺れを抑える試みは、誰がどのリスクを負うのかをあらためて問い直す局面に入っている。
