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10月14日夜、選挙プランナー松田馨氏が率いる株式会社ダイアログが、自社サイトに「自民党総裁選に関する週刊誌報道について」と題するコメントを掲載した。小泉進次郎氏陣営で共有された“応援コメント例”は同社従業員が作成していたと認め、牧島かれん氏が主導したとの見方を明確に否定。重い謝罪と再発防止策が示され、揺れた責任の所在に一筋の輪郭が与えられたと映る。
謝罪文が示した「作成者」の所在
コメントは2025年10月14日付で、公表の理由を「正確な情報を発信すべきと判断」と置いたうえ、社内調査の結果として問題のコメント例文案を作成したのは当社従業員だと明記した。さらに、今回の総裁選の動画配信に関し、牧島氏がコメント例を作成し投稿を主導したかのように受け取れる記載は事実と異なると断じ、経緯の説明に続けて関係者への謝罪を重ねた構成である。
とりわけ目を引くのは、「他の候補者を貶める意図はなかったとはいえ、そう受け取られかねない表現が含まれていたことは事実であり、痛恨の極みであります」との一節である。ネット選挙の最前線で、支持の呼びかけとネガティブな受け止めの境目が揺らいだことへの自省がにじむ。現場の温度と、閲覧する側の肌感のズレが浮かぶ。
同社は再発防止策も具体に示した。政治コンサルやSNS運用の倫理規定を定めるガイドラインの制定、外部発信前の複数名チェックの義務化、倫理と表現に関する研修の実施、そして代表の役員報酬減額による経営責任の明確化である。あわせて、支援者に応援コメントを呼びかけること自体は一般的な選挙運動の一つで「ステマ」には当たらないとの見解も示し、線引きの位置を説明した格好だ。
火種はどこで生まれたのか
発端は、告示直後に陣営内で共有されたとされる“好意的な書き込み”を促すメールにあるとみられる。動画配信のコメント欄を念頭に置いた例文が出回り、一部には他候補を刺激しかねない表現が含まれていたと報じられてきた。ネット上では瞬時に賛否が渦を巻き、善意の応援か、印象操作かという二項対立が広がっていったのである。
当初、矢面に立ったのは総裁選で総務・広報を担った牧島かれん氏だった。氏は「確認不足により一部いきすぎた表現が含まれた」との趣旨を文書で示し、陣営も「責任は候補にある」との姿勢を繰り返したと伝えられた。だが「誰が文例を作り、どのレベルで共有が進んだのか」という核心は霧の中で、説明の空白が憶測を呼ぶ状態が続いていたといえる。
今回のダイアログの表明により、少なくとも作成主体は同社従業員だったことが公式に示された。これにより、当初の矢印が誤って向けられていた可能性が浮かび、責任の割り振りが書き換えられる。同時に、社外の政治家や支援者を巻き込む情報設計の局面で、外部に出る言葉の最終責任を誰が持つのかという、運用上の統治の弱点も露出したとみられる。
選挙の熱気が去った後に残る問い
選挙戦の熱が収まりつつあるなかで示された今回の謝罪は、波紋の中心を静かに指し示した。結果が出た後の10日前後というタイミングは、当事者にとって事実確認と関係者への謝罪、再発防止策の整理に要した日数を物語る。拙速な否定や責任転嫁が続く中で、どこまで信頼を取り戻せるかが次の焦点である。
一方で、支援者に応援を呼びかけることと、匿名性の高い場で世論を装うことの間には細い境が横たわる。ダイアログは「ステマではない」と位置づけたが、受け手の側に誤解を与えない配慮や表現の節度、そして運動への関与範囲の透明化は、なお試され続ける。現時点で確認されている範囲では、運用ルールの明文化と説明責任が不可欠だ。
政治への信頼は、ルールと透明性の積み重ねの上にしか戻らない。今回の表明が、当事者の名誉回復に資するだけでなく、選挙実務の作法を見直す契機となるか。陣営と業界が、制作物の監督責任やチェック体制をどこまで開示できるのか。次の選挙に向け、具体の行動に落とし込めるかが問われている。
