ネタニヤフ首相がムハンマド首相に謝罪、ガザ停戦と関係修復促進

2025.10.06

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ドーハの空に残る黒い煤の匂いがまだ消えない。イスラエルのネタニヤフ首相が、2025年9月9日のドーハ空爆をめぐりカタールのムハンマド首相兼外相に電話で謝罪した。2025年9月29日の通話には米国のトランプ大統領が同席し、関係修復とガザ即時停戦に向けた新たな枠組みづくりを後押しした構図である。カタール人1人が死亡した攻撃の後、米国が三者の距離を埋めに動いた。

謝罪の一報と「二度と繰り返さない」約束

2025年9月29日、ワシントンとドーハを結ぶ回線で三者が向き合った。ホワイトハウスは、ネタニヤフ氏がカタールの主権侵害を認め、再発を防ぐと約束したと明らかにした。協議ではガザ戦争終結に向けた提案も議題となり、米国が主導する新しい枠組みの輪郭が示されたと映る。会談後にはワシントンで両首脳が並び、空気の緊張と現実的な利害が交錯した光景が浮かぶ。

カタール外務省も同日の電話会談を確認し、ネタニヤフ氏が謝罪の意を伝えたと発表した。声明は、犠牲となった市民バドル・アル・ドサリの名を挙げ、領土と市民の保護は譲れないと強調した。再発防止の確約が示された点を評価しつつ、主権侵害は許さない姿勢を崩していない。謝罪を起点に、調停の手綱を握り直す意志がにじむ。

会談の舞台裏では、仲介役の復帰が焦点となった。ドーハの仲裁は人質解放や停戦協議の回路を支えてきた経緯がある。謝罪の言葉は、止まっていた歯車を再び動かす潤滑油になり得る。誰に有利なのか、偶然か必然か。米国は交渉の座組みを整え、地域の緊張を管理する狙いをにじませたとみられる。

ドーハ空爆が残した傷跡

発端は2025年9月9日、ドーハ市内の住宅複合施設に向けられた攻撃だった。会合中のハマス関係者を狙ったとされ、施設周辺には学校や外交公館もある。カタール当局は攻撃を「卑劣で主権の露骨な侵害」と非難し、国連人権理事会などの場でも法的責任を追及する姿勢を示してきた。外交の街を直撃した一撃は、調停国家の面目を深く傷つけた。

この攻撃で少なくとも6人が死亡し、うち1人はカタールの治安要員だったと伝えられている。現場には黒煙が立ちのぼり、住民はがれきの間を行き来した。仲介の中枢が狙われたことで停戦工作そのものが揺らいだ構図が浮かぶ。国連やウィーンの国際機関の場でも、主権と国際法をめぐる強い言葉が飛び交ったのはその裏返しである。

イスラエル側はテロ組織の指導部を無力化する作戦だったとの立場を崩していないとみられる。一方、カタールは調停の継続を改めて表明し、国際社会に明確な立場を促している。攻撃が交渉の土台を掘り崩すのか、逆に圧力となって合意を押し出すのか。都市の静けさが戻らないまま、地域秩序の線引きが問われている。