ブエノスアイレスで若い女性3人が拷問殺害、SNS流出で抗議広がる

2025.09.30

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アルゼンチンの首都圏で、若い女性3人が拷問の末に命を奪われ、その一部始終がSNSで私的に流されたとされる事件が社会を揺らしている。遺体はブエノスアイレス南部の住宅で見つかり、捜査は麻薬組織の報復という線を強める。一方で街には「一人も減らすな」の声が広がり、性別に根差す暴力と犯罪組織の残酷さが交差する現実が突きつけられている。

3人の足取りと発見まで

遺体が見つかったのは2025年9月24日。ブエノスアイレス州フロレンシオ・バレラの民家の庭から、20歳の女性2人と15歳の少女の遺体が掘り起こされた。3人はいとこ同士2人と友人1人で、家族らは数日間の行方不明届を出し、近隣は不安と怒りに包まれていた。

最後に姿が確認されたのは前週末の夜だった。3人は「パーティーに行く」と信じて外出し、白い車に乗り込んだとされる。だが、その道行きは周到に仕掛けられた罠で、彼女たちが帰宅することはなかった。残されたのは、街角の防犯映像と動かぬ沈黙だけだ。

当局は携帯端末の位置情報と監視カメラを丹念に重ね、車両が南下して当該住宅に至ったと推定した。現場では強い洗剤の痕跡が見つかり、車両は近くで焼かれていたという。計画性の高さを示す断片が、否応なく捜査線上に浮かび上がっている。

初動で複数の関係者が拘束され、司法は事件をフェミサイドとして位置付けた。犯行は単独ではなく、複数人の役割分担の上で遂行された疑いが濃い。捜査は連邦の麻薬犯罪対策部局も巻き込み、実行役と指示役の双方を追う段階に入った。

「見せしめ」の構図――麻薬組織の報復か

州の治安当局トップは、今回の殺害が麻薬組織による「復讐」であり、あらかじめ仕組まれた誘い込みだったと説明した。偽装ナンバーの車両、現場の入念な清掃、証拠隠滅の手口。どれも即興の暴走ではなく、犯罪ビジネスの論理で組み立てられた動きだという。

一部報道によれば、拷問と殺害の様子はSNSの非公開配信で共有され、加害側は「麻薬を盗めばこうなる」と脅しのメッセージを添えたとされる。視覚化された暴力は、組織内部の統制と外部への威嚇を同時に達成する装置になり得る。捜査当局は映像や端末の解析を急いでいる。

背景には、都市の周縁に根を張る販売網と人の流れがある。被害者は「パーティー」という日常の名を借りた入口から、犯罪組織の支配と暴力の回路へ引きずり込まれた可能性が高い。麻薬取引と性差別的暴力が絡み合う「ナルコ・フェミサイド」という言葉が、今回ほど重さを帯びた場面は少ない。

広がる怒りと問い――フェミサイドの現実

街は沈黙しなかった。2025年9月27日、ブエノスアイレス中心部には人の列が続き、「私たちの殺害を止めろ」と掲げるプラカードが風に揺れた。呼びかけに応じた市民は、犠牲となった3人の名を繰り返し、暴力の連鎖を断つ政治と司法の責任を求めた。

数字は冷酷だ。最高裁の司法統計によれば、2024年にフェミサイドの直接の被害者は228人で、発生頻度は39時間に1件という水準だった。統計の山の一つひとつに、名前と生活と関係性があることを、今回の事件は生々しく思い出させる。

市民団体の観測では、2025年1～8月の間に164人の女性が命を落とした。地域の脆弱さ、経済の不安定、違法市場の浸透。複数の要因が重なり、女性や10代の少女が最も危険な場所へと追いやられる。必要なのは、治安対策とジェンダー政策を分断しない視点だ。

被害者の名前を呼ぶ行進は、事件の「異常さ」を突くと同時に、日常に埋め込まれた構造の問題を照らす。SNSで可視化される暴力は、消費される映像の問題で終わらない。誰が守られ、誰が見捨てられているのか。3人の命が問うのは、社会全体の選び方そのものだ。

3人の足取りと発見まで

「見せしめ」の構図――麻薬組織の報復か

広がる怒りと問い――フェミサイドの現実

参考・出典