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白い防犯フェンスの向こうで、掘削機のアームが静かに瓦礫をつかむ。２３日午前に撮影された衛星画像では、ホワイトハウスの東棟がほぼ姿を消し、跡地一帯が土色の斑に変わっていた。トランプ大統領が推し進める宴会場新設計画は、歴史的空間をどう扱うかという問いを、現場の音とともに突きつけている。
東棟が消えた日—衛星とレンズが捉えた変化
重機が壁面を崩し始めたのは、現地の２１日と伝えられている。敷地の外側から見える範囲だけでも、東棟の外壁がはがれ、回廊側の構造体が露わになっていった光景が映像で確認できる。フェンス越しに足を止めた見物客がスマートフォンを向け、時折ため息を漏らす様子が重ね撮りされ、変化の速度を示していたと映る。
その翌日、建設車両の出入りはさらに増え、玄関ポーチに相当する部分の撤去が進んだ。外周にはより高い仮囲いが立ち、内部の見通しは遮られたが、剥き出しの梁と崩落した窓枠が端々に残り、解体が建物の中心へ食い込んでいることを物語った。現場の騒音は断続的に続き、敷地の奥ではコンクリート車両の待機も見えたという。
２３日午前の衛星画像では、東棟はほぼ更地に変わり、廃材の山が点々と広がっていた。２４日には、衛星写真の解析から「解体が完了した」との見立ても出ている。地上の映像と上空の画像が補い合い、伝統的に大統領夫人の執務室が置かれてきた建物が、短い時間軸で失われていく過程が浮かぶ。
説明の変遷と広がる波紋
計画の輪郭も、この数日のあいだに色合いを変えた。７月時点で大統領は、宴会場は既存の建物に「触れない」と強調していたが、２２日のやり取りでは「適切に行うには既存構造を取り壊す必要があった」と趣旨を改めたとされる。政権側の関係者も、東棟の「全体を近代化する」方針を示し、規模拡大を事実上認めたと伝わる。
手続き面でも、揺れが続く。首都圏の都市計画審査に関わる所管への正式提出は「これから」とされ、保存団体は計画の一時停止と公開の場での審査を求めている。歴史的景観に対して新設される大規模空間の「量塊」が、主屋との均衡を崩すのではないかという懸念が膨らみ、監督と透明性を問う声が広がっていると映る。
一方で、運用上の受け皿は動いた。東棟に置かれていた大統領夫人のオフィスや関連部局は、敷地内の別棟などに移転済みとされる。資金の性格や寄付者の顔ぶれをめぐっても注目が集まり、２４日には寄付者リストが公表され、巨大テック企業の名が並んだとする報も出た。完成後は東室から宴会場へ直結させる構想も示され、ホワイトハウスの動線そのものが変わる可能性が高いとみられる。
