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秋の光が差し込む赤坂の仙洞御所で、上皇后美智子さまが91歳の誕生日を迎えた。2025年10月20日、宮内庁は近況を公表し、昨年の右大腿骨骨折はほぼ回復した一方、午後に体温が上がる症状やBNP高値が続いていると明らかにした。寄り添い支える日々の輪郭が静かに浮かぶ。
回復と向き合う日々
昨年10月に右大腿骨を骨折した美智子さまは、いま「ほぼ骨折前の状態」まで戻られたという。上皇さまの退院後、仙洞御所で日々のリハビリに励み、年明けの新年行事と翌日の一般参賀にも立ち、ふたたび人前に姿を見せた。その背には、早く上皇さまを支えたいという静かな決意がにじむ。
2月末にはスイセンの咲く葛西臨海公園を上皇さまと訪ね、4月末には学習院ゆかりの企画展に足を運んだ。8月後半は長野・軽井沢町大日向で静養もとられたが、東京大学病院での上皇さまのお見舞いや宮内庁病院への通院を除けば、この一年のお出ましは数えるほどにとどまった。
午後に少し熱が上がる以前からの症状は続き、心不全の指標であるBNP値も正常値を上回る水準で推移している。深部静脈血栓症は経過観察中で、再発予防のため水分を十分に取るよう努める。転倒防止のため侍医の介助で歩行を重ね、体調に応じて御所内外をゆっくり歩く日が続く。お疲れやすくなり、体力が少しずつ低下しているとの見立ても示された。
戦後80年に寄せるまなざし
御所では新聞やニュースに目を配り、社会の出来事に静かに心を寄せてきた。1月の能登半島地震・奥能登豪雨犠牲者の追悼、発生から30年の阪神淡路大震災、3月の東日本大震災の発生日、さらに沖縄慰霊の日、広島・長崎原爆の日、終戦の日には、上皇さまとともに黙祷を捧げ、終日静かに過ごした。
節目の年に、天皇皇后両陛下が硫黄島、沖縄、広島、長崎を巡られた慰霊の旅を見守り、上皇さまとは戦後50年の折に同じ地を訪れた思い出を語り合ったという。時の層が重なり、祈りが受け継がれていく光景が浮かぶ。戦後80年の重みが、静かな会話の端々に宿る。
8月の軽井沢・大日向での静養は、上皇さまのご病状を踏まえて慎重に実施が検討された。それでも、満蒙開拓の歴史を伝える土地を再び訪ねられたことに安堵の表情があったとみられる。上皇さまは5月と7月に東京大学病院へ入院し、美智子さまは連日見舞い、退院後も細やかに支え続けている。
受け継がれる思いと日々の楽しみ
ご成婚の祝い金を基に1965年に開園した「こどもの国」は今年で60年を迎えた。6月、理事長らから歩みと現状の説明を受けると、今も多くの人に親しまれる事実を喜び、関係者への感謝を伝えた。都市化の中で子どもが自然に親しむ場を守りたいという原点が、今も息づいている。
5月には、家族で夏を過ごした奥浜名湖畔・細江町に美智子さまの御歌碑が建ち、除幕式が行われた。上皇さまの御製碑に並ぶ新たな石碑は、若い日の家族の時間を映し出す。同じく1月には、未発表の御歌466首を収めた歌集「ゆふすげ」が上梓され、編纂を託した永田和宏氏への信頼が記されている。
9月6日、悠仁さまの成年式を終えた挨拶を仙洞御所で受け、夕刻の内宴にも臨んだ。テレビ中継で加冠の儀を見守り、凜とした成長を頼もしく喜ばれたという。朝には上皇さまと本を音読し「いちにち、古典」を読み進め、ひとりの時間には「シリアの秘密の図書館」を手に取る。お誕生日行事は今年も簡素に行われると映る。
