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ＥＵ首脳は2025年10月23日、来月のＣＯＰ30を前に、2040年までの温室効果ガス排出目標の枠組みで方向性をそろえた。2050年の実質ゼロへ向け、2040年にネットで90％削減を掲げる委員会提案を土台に、除去量や国際クレジットの扱い、見直し条項などの柱で一致を探った。産業競争力との両立をにらみ、詳細は今後の閣僚協議に委ねられる。
首脳が示した「2040年の設計図」
秋雨が残るブリュッセルの会場前で、各国首脳の往来が絶えなかった。議題は安全保障から住宅政策まで広がったが、焦点の一つは気候と競争力の両立だった。会合は、グリーン転換を競争力の源泉へとつなげるための実務的な設計を詰める場へと変わりつつあると映る。
首脳は2040年に向けた中間目標の達成を支える戦略的議論を行い、三つの要素を重視した。第一に、自然由来や技術起源の炭素除去を全体削減にどう現実的に組み込むか。第二に、国際クレジットの認め方を質の高いものに限定しつつ適切な水準を定めること。第三に、科学や技術の進展を踏まえた見直し条項である。
さらに、エネルギー価格の高止まりが産業と家計に与える影響を直視し、手頃でクリーンな電力の確保や電力網・貯蔵への投資を加速する方針が示された。排出量取引制度の拡張（ＥＴＳ２）の円滑な導入に向けた調整も求め、実行可能性を高める下支えの必要性がにじむ。
揺れる合意点、産業と気候のはざまで
基準点は欧州委員会が示した道筋だ。委員会は2025年7月、欧州気候法の改正案を提示し、1990年比で2040年までにネットで90％削減する目標の法定化を提案した。2030年の少なくとも55％削減と2050年の気候中立をつなぐ中間地点として、投資の予見可能性を確保する狙いがある。
一方で、各国の事情や産業構造の違いは小さくない。協議では、国別事情を織り込む柔軟性や、競争力・カーボンリーケージへの目配りを求める声が強いとみられる。首脳文書でも伝統産業の持続性に言及があり、脱炭素と雇用の両立をどう描くかが核心として浮かぶ。
残された焦点は、除去量の不確実性管理と、クレジットの数量・品質基準の線引きだ。自然由来の吸収源の変動をどう織り込むか、技術的除去の道筋をどう評価するか。さらに、情勢や科学の更新を織り込む見直しの頻度と範囲をどう設計するかが、実装段階の鍵になる。
ＣＯＰ30へ、欧州が持ち込む現実解
ＣＯＰ30まで残された時間は多くない。ＥＵは中間目標の骨格で足並みをそろえ、国際交渉の場に現実解を持ち込む構えだ。国内制度と国際クレジットの接続、測定・報告の厳格化、産業支援の設計が一体で動くときにのみ、数字が実効を持つとの認識が広がっている。
現時点で確認されている範囲では、詳細設計は今後の閣僚協議で詰められる見通しである。一部報道では11月初旬の環境相理事会での判断が視野に入るとされるが、公式な確定は出ていない。首脳は委員会に追加の支援条件の肉付けを求め、数週間単位での前進を促している。
気候目標をめぐる合意は、産業の新陳代謝と生活の安定をどう両立させるかの社会契約である。欧州が選ぶ線は、他地域の政策や市場にも波紋を及ぼす。ＣＯＰ30のテーブルに置かれる“欧州の答え”は、現実と理想の接点をどこに見いだすのかを映し出すだろう。
