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大阪・関西万博でも走った電気自動車(EV)バスで構造上の欠陥が見つかり、販売元のEVモーターズ・ジャパンが11月28日、中型バスのリコールを国土交通省に届け出た。すでに9月の総点検で全国317台のうち113台にブレーキ損傷が判明している。この一連の動きは、公共交通のEV化をめざす現場にどんな負担と選択肢を突きつけているのだろうか。
万博の足を支えたバス、止めたのは「安全への違和感」
大阪・関西万博の会場アクセスには、ディーゼル車に加えてEVバスも投入されていた。不具合が相次ぐと、事業者の一部は該当車両の運行を休止し、急きょ別のバスをかき集めてダイヤを維持した。運行本数そのものは守れても、運転士のやり繰りや車両点検の手間は増え、現場は「環境負荷よりも、まずは乗せている人の安心だ」という判断を優先せざるをえなかった。
万博以外の地域でも、同じ車両を導入した自治体やバス会社が影響を受けている。地方のスクールバスでは、信号待ちの最中に車が動かなくなったり、ハンドル操作に違和感を覚えたりした例が報じられ、最終的に別の車両へ切り替えた自治体もある。路線バスより余裕のないスクール輸送では、代替確保の負担が保護者や学校現場の不安と直結しやすい。
こうしたトラブルは、EVそのものの是非というより「十分な検証が行われたのか」という不信につながる。利用者から見れば、中国製か国産か、自動運転機能の有無かといった技術的な違いよりも、「きのうまで普通に走っていたバスが、きょう突然止まらないか」という切実な感覚が先に立つ。電動化の旗を掲げるほど、万一の不具合はブランド全体の印象を大きく左右する。
販売元と国交省、リコールと立入検査で何を改めるのか
今回のリコールの対象となった中型EVバスでは、ブレーキ部品が車体と接触し、使い続けるうちに摩耗していく恐れがあることが分かった。制動力が落ちれば、国が定める保安基準を満たさなくなる可能性があり、単なる部品不良ではなく構造上の欠陥と評価された形だ。国土交通省にリコールを届け出たことで、販売元は設計を見直し、原因となった箇所を順次改善していく責任を負う。
国交省はすでに9月、同社が販売した317台すべてに対し総点検を指示し、その結果として113台でブレーキホース損傷などの不具合が確認されたと公表している。事業者側は修理を終えたと説明するが、設計起因のリスクまですべて解消できたかは別問題だ。今回のリコールは、応急的な部品交換から、車両全体の設計を前提にした恒久対策へと踏み込むプロセスでもある。
10月には、国交省が北九州市の本社に道路運送車両法に基づく立入検査を実施し、総点検の方法や不具合報告が適切だったかを確認した。輸入した車両を国内で販売するビジネスでは、製造国の基準と日本の保安基準との間に「すきま」が生まれやすい。行政がリコールや立入検査を通じて、そのすきまをどこまで埋めにいけるのかが、今後のEV商用車ビジネス全体の信頼性を左右する。
EVバス普及の勢いを、安全基準はどう追いかけるか
EVモーターズ・ジャパンは、脱炭素を掲げる自治体や事業者に向けて商用EVを積極的に売り込んできた企業だ。大阪・関西万博での採用も、そうした流れの象徴だった。しかし、短期間に多くの車両を投入した結果、トラブルが表面化した側面も否めない。低炭素のメリットを急いで取り込もうとした公共セクターと、納期を優先したサプライヤーのバランスが問われている。
一方で、EVバスの安全課題はこの一社だけの問題ではない。別のメーカーでも、駐車ブレーキ関連の不備を理由としたリコールが相次ぎ、国交省への届け出が行われている。電動化に伴い、モーター制御や高電圧バッテリーなど新たなリスクが増えるなかで、従来のエンジン車とは別種の点検項目や運行マニュアルが必要になりつつある。
国交省は2025年9月、バッテリー火災が起きた際に乗員をどこまで守れるかを確認する新たな試験を将来義務化する方針も打ち出した。今後は、新型EVバスの開発段階で求められる安全要件が一段と厳しくなるだろう。地方のバス会社や自治体にとって、EV導入は環境対策であると同時に、追加の検査費用や予備車両の確保といったコストの問題でもある。その負担を誰がどこまで引き受けるのかという問いは、今回のリコールが示したまま、なお現場に残されている。
