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裁判長が静かに結審を告げると、被告席の元航空自衛隊1等空佐、菅野聡被告は最後まで前を見据えていた。2013年に埼玉県の入間基地で米国製早期警戒機E2Dの情報を漏らしたとして、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法違反に問われた裁判は、2025年11月25日、東京地裁で最終弁論を迎えた。弁護側は「米政府が公式に供与した情報ではなく特別防衛秘密に当たらない」と繰り返し無罪を訴え、判決期日は2026年3月10日に指定された。
法廷でぶつかった「特別防衛秘密」をめぐる攻防
菅野被告が問われているのは、米国製早期警戒機E2Dの性能などが記録されたとされるデータを、航空機関連商社の社員に渡したという点である。検察側は、入間基地で機体に関する説明をしたうえで、特別防衛秘密に当たる情報が入ったUSBメモリを提供したと主張し、日米の信頼関係を損ないかねない重大な行為だと位置付けている。
これに対し弁護側は、問題のデータは米政府から日本側へ「供与」された装備品や情報ではなく、法律が定める特別防衛秘密の定義にそもそも当てはまらないと反論する。秘密保護法は、米政府から正式に提供された装備品の構造や性能、関連情報などを保護対象とする仕組みで、弁護側は「公式供与でない以上、同法違反は成立しない」として無罪を求めている。
2024年10月の初公判では、菅野被告が「特別防衛秘密の入ったファイルを他者に渡したことはない」と述べ、起訴内容を全面的に否認している。今回の最終弁論でも姿勢は変わらず、およそ10年前の行為とされる出来事を、法律の解釈と事実認定の両面から争う構図が改めて浮かび上がったと傍聴席からも重い空気が伝わった。
秘密保護法という枠組みと、判決が映すもの
日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法は、1954年に定められた古い法律だが、今も米軍から供与される装備品や情報を守る枠組みとして機能している。米国から正式に引き渡された艦艇や航空機などについて、構造や性能、数量、関連情報を「特別防衛秘密」として指定し、不正な取得や漏えいには最長10年の懲役刑を科す内容だ。
この法律は、2007年に海上自衛隊のイージス艦に関する情報が流出した事件でも適用され、有罪判決が確定した前例があると報じられている。過去には米側が機密流出への懸念を示し、日本政府に情報保全体制の強化を求めてきた経緯もあり、今回の裁判は単なる個人の刑事責任を超え、日米同盟の信頼や自衛隊の情報管理への評価にも影響しかねないと見る向きがある。
求刑は懲役4年と、同法が定める最長刑10年よりは軽いが、軍事機密を扱う自衛官へのメッセージとしては重い意味を持つ。判決が無罪となれば、米側から提供される情報のどこまでが特別防衛秘密に当たるのかという線引きが改めて問われ、有罪となれば、自衛隊内部の情報共有や民間企業とのやりとりの在り方に一層の萎縮が広がる可能性も指摘されている。
静まり返った法廷に残ったのは、来年3月に言い渡される一つの判断が、遠い基地で交わされたデータのやりとりと、これからの安全保障の足元をどう照らすのかという、言葉にならない緊張感だけだった。
