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終局の一礼がほどけると、藤井聡太竜王は京都競馬場の会見場に現れ、静かに笑った。2025年11月13日夜、第38期竜王戦七番勝負を4勝0敗で制し、連覇を5期に伸ばして「永世竜王」の資格に到達した。この会見で、称号への思いと2日制と1日制の手ごたえの違いを語った。
会見で語った“永世”の重み
「非常に名誉のある資格」と言い切った声は控えめだが、手応えは明瞭だった。七番勝負(先に4勝で決着)は開幕から3連勝。第4局も押し切り、通算4勝で防衛を決めた。会場の京都競馬場は大型ビジョンの前で解説会も開かれ、終局の瞬間にどよめきが広がった。
永世竜王の要件は、連続5期か通算7期の到達。永世称号(特定条件を満たした棋士に与えられる終身称号)は機会が限られると藤井は捉え、だからこそ一局ごとの質を落とさないと述べた。苦しい局面でも諦めず指し続けたことが実を結んだ、と振り返った。
今期のシリーズは序盤研究の深さだけでなく、終盤のねばりが際立った。23歳での到達は、通算の栄冠を積み上げる道のりの早さを物語る。必要条件を最速で満たしにいく姿勢が、盤上での選択の鋭さと呼応していたように映る。
2日制と1日制、準備の質が変わる
藤井が語ったのは形式の違いだ。2日制(持ち時間が長く2日にまたぐタイトル戦の形式)では、構想の積み上げと体力配分が勝敗を左右する。一方、1日制(持ち時間が短く当日に完結する形式)は、時間配分と踏み込みの精度が前面に出る。彼は両者で準備の“質”を切り替えるという。
王位や竜王の2日制では、大筋の方針を早い段階で固め、夜の封じ手までに分岐を整理する。棋聖や棋王の1日制では、秒読みを見据えた実戦的な選択を厚くする。積み上げ型と即応型、その両輪が今期の安定感につながったと読み取れる。
第4局でも、角換わりの細部で方針をぶらさずに進め、終盤は読みの速度で抜け出した。長丁場ゆえの緩急の付け方が、1日制で鍛えた瞬発力と噛み合い、要所の決断を支えた。形式の差を強みに変える作法が、若さとともに成熟してきた。
記録の意味と、これから
永世棋聖と永世王位に続き、今回で永世称号は3つ目となった。複数の永世称号を得た棋士は歴史上ごく少ない。23歳3か月での到達は、過去の基準と比べても際立つ水準で、“永世三冠”の最年少更新として受け止められている。
将棋界はAI研究の深化で序盤から終盤まで精度が上がり、トップ間の差が縮まっていると言われる。その環境で条件を連続で満たすには、内容面の維持と体調管理の両立が欠かせない。今回の勝負は、その難題を実務として解いてみせた格好だ。
年明け以降もタイトル戦は続く。形式の異なる番勝負を渡り歩くスケジュールは過密だが、準備の方法論が確立していることは大きい。記録が新たな基準になるほど、目の前の一局は静かに重くなる。その静けさを保つ術を、彼は身につけつつある。