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国会日程が詰まる中、カメラの前で言葉を選んだのは、日本維新の会の藤田文武共同代表だ。2025年11月5日、政府が投資促進を掲げる局面で日銀が利上げを急げば成長の足取りを鈍らせかねないと語り、実体経済の確認を踏まえた適切な時期での判断を促した。連立与党の一角として、財政と金融の歩調をそろえる重要性をにじませた。
利上げのタイミングに「抑制」を
藤田氏はインタビューで、企業の設備投資を後押しする経済対策を加速させる今、金融面が急に引き締まれば政策のメッセージが交錯すると指摘した。「すぐに利上げ」となれば、アクセルとブレーキを同時に踏むことになりかねないという見立てだ。まずは実体経済の反応を見極め、段階的な運びを求めた。
一方で、適切な時期の利上げそのものを否定はしないとも述べた。過度にインパクトの大きい手法は避け、マーケットが荒れないようモデレートに、という日銀の姿勢には理解を示す。金融政策の正常化は目的ではなく手段であり、成長の芽を傷めない設計が要るという含みを持たせた。
投資家の間では、次の一手の時期を年内か年明けに探る視線が続く。新政権の経済パッケージの策定と中央銀行の判断が重なれば、相互作用は大きい。賃金や企業収益の改善が見通しどおり広がるか、物価の粘り強さとあわせて、タイミングの微調整が試される局面だ。
新政権の経済運営と市場の反応
高市早苗首相は10月4日に自民党総裁に就き、初の所信表明で防衛費を2025年度中にGDP比2%とする目標の前倒しや、景気下支えに向けた積極的な財政運営を打ち出した。経済の強さを財政健全化の基盤と位置づけ、債務の対GDP比の安定的な低下を重視する姿勢を示している。
市場はそのメッセージを織り込みながら大きく揺れた。10月31日には、日経平均が取引時間中として初めて5万2000円台に乗せ、上昇幅は一時1000円超に広がった。為替の円安進行や海外企業の好決算が追い風となり、長期金利の上昇もにらみつつリスク選好が強まった。
もっとも、週をまたいだ局面では利益確定の売りや材料待ちの空気も交じる。景気下支えの財政措置、企業投資の呼び水、そして金融の調整ペースという3つの強弱が、日々の値動きに細かな陰影を落とす。政策の連携が保たれるかどうかは、企業と家計の心理にも響く。
防衛費と財源、政策の整合性
防衛力強化の前倒しは、財源の手当てを急がせる。増税に踏み切るのか、歳出改革や税収増で賄うのか、あるいは補正予算の活用をどう位置づけるのか。いずれの道を選ぶにせよ、成長重視のスタートダッシュと、持続可能性の確保という二律背反の解き方が問われる。
供給側の体力を底上げし、コスト構造の硬直を和らげる策も並走する。国内産業の生産性を高め、装備や技術の供給網を厚くする取り組みは、中長期の負担増を抑える土台になる。短期の需要喚起と中長期の構造強化をどう重ねるかが、景気の持続力を左右する。
財政がアクセルを踏む時に、金融はどの踏みしろで伴走するのか。藤田氏の慎重論は、過熱も失速も避けたいという実務的な感覚に根ざす。相場が強弱の波を繰り返すなかで、政策の呼吸が合えば、過度な揺れは和らぐ。きょうの一言は、その揺らぎの中心を静かに射抜いた。
