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山あいの赤村で、静かな山林が行政の判断を映す鏡になった。県道整備のための用地買収を巡り、福岡県が当初算定の約5倍という異例の高値で土地を取得していた問題である。県は2025年8月13日に「不適切だった」と認め、同22日には服部誠太郎知事が「重大な問題」と語った。内部情報の流出経緯を探る聞き取りも始まり、公益通報の扱いをめぐる論点が浮かぶ。
揺れた用地価格、現場で起きていたこと
現場は福岡県赤村の山林、面積は2505平方メートル。県は県道整備の用地としてこの土地を取得した。県の出先機関である田川県土整備事務所が交渉を担い、当初は山林として約430万円と見積もったが、地権者が難色を示した後に見積もりを重ね、最終的に約2165万円で買収した経緯が明らかになった。
8月13日、県は記者会見で「不適切だった」と認め、補償額の算定をやり直す方針を示した。翌週の8月22日、服部知事は定例会見で「信頼を損ないかねない重大な問題」と述べ、出先機関だけで判断しない運用への見直しや、過去5年分の取引点検を行う考えを表明した。行政の手続きに対する視線は一段と厳しくなったと映る。
報道各社は、造成費用の扱いなど算定の根拠が揺らいだ点を指摘した。県は地権者からの圧力を否定しつつ、近隣より著しく単価が高いことや、現地把握が不十分なまま2度の増額に至った点を認めた。数字が独り歩きするのではなく、どの根拠に基づいて膨らんだのかが問われている状況だ。
県の内部調査が投げかけるもの
一方で、問題の発覚過程で内部情報が外部に漏れた疑いがあるとして、県が9月から職員への聞き取り調査に着手したことが、関係者の証言をもとに報じられた。現時点で確認されている範囲では、担当職員ら数十人を対象に、資料の保管状況の確認に加え、「不審な人を見なかったか」といった質問が投げかけられ、調査内容の口外を控えるよう求められたという。
県人事課は「今回は保護要件を満たさず公益通報に当たらないため、調査は問題ない」との立場を示したとされる。「県民のためになった事案でも情報流出は放置できない」という論理で、情報管理の徹底を優先する姿勢だ。ただ、その過程で結果的に告発者の特定に近づくリスクは残る。調査の線引きがどこにあるのかが焦点となる。
公益性のある情報を提供した者の探索は制度の趣旨を逸脱するという識者の批判もある。県が買収の不適切さを認め、是正に動いている以上、告発は公共の利益に資する側面が強いとみられる。内部統制の名の下で探索と受け取られかねない聞き取りが進めば、今後の通報抑制につながる懸念が広がっている。
公益通報を守る法のいま
公益通報者保護法は、一定の要件を満たせば報道機関への通報も保護対象とする制度設計になっている。2025年6月4日に改正法が成立し、同11日に公布された。施行は公布から1年6か月以内とされ、2026年中の施行が見込まれる。改正の狙いは、通報の実効性向上と保護の範囲拡大にあるとされる。
今回の改正では、通報を妨げる合意の無効化や、通報者の特定を目的とする行為の禁止が明文化された。加えて、通報を理由とする解雇・懲戒に対しては刑事罰を含む抑止・救済の強化が盛り込まれた。他方、組織の調査と通報者保護のバランスという難題は残り、現場運用の知恵が問われている。
情報管理の厳格化と、公益性の高い情報に光を当てる仕組みは両立しうるのか。福岡県の一連の対応は、その試金石として全国の自治体や企業にも波紋を広げている。数字の再算定だけでなく、通報への向き合い方を明示することが、失われつつある信頼の回復につながると映る。
