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福島県浪江町の研究拠点である福島RDMセンターで2025年9月25日、會澤高圧コンクリートと米・マサチューセッツ工科大学が、電気を蓄える「蓄電コンクリート」を組み込んだ標準モジュールを世界で初めて一般公開した。容量構成は1立方メートル級。全国45社が結集する工業会も同日発足し、住宅やインフラで再生可能エネルギーをため、賢く使うための社会実装が本格的に動き始めたと映る。
浪江で灯った標準モジュール
海風が抜ける実験棟で、来場者が見守る中、点灯式の照明が明滅した。会場はテックイベント「結」。福島RDMセンターに据えられた直方体のモジュールは、外観だけ見れば灰色のコンクリート塊である。だが内部では蓄電と放電が循環し、コンクリートそのものがエネルギー装置として機能することを可視化した。公開は2025年9月25日、翌26日に発表が整理され、節目の一日となった。
電力の由来にも土地の物語が重なる。モジュールに充電した電力は燃料電池車から供給され、水素は浪江のFH2Rで太陽光由来として製造されたという。再エネが水素に変わり、再び電気となってコンクリートへ蓄えられる循環が、地域の中でひとつにつながる。技術が地域の資源や産業と結び直される瞬間が、この小さな点灯に凝縮していたといえる。
仕組みと性能、1立方メートルで100V級
標準モジュールの心臓部は、カーボンブラックを添加して導電性を持たせたコンクリート電極だ。45センチ角の電極2枚の間に電解液を含んだセパレーターを挟み、約1ボルトのセルを構成する。これを25層に積層して約25ボルトのユニットとし、同ユニットを4基接続して100ボルト級の出力を引き出す。セパレーターの湿潤状態を保つため、コンクリート製のハウジングで封止し、1立方メートル規模の一体構造に仕上げた点が世界初として位置づけられた。
この装置はバッテリーではなくスーパーキャパシタとして設計されている。電気二重層の原理を用いるため一般に急速充放電に適し、サイクル劣化が小さいとされる。コンクリート材料に蓄電機能を与える発想は以前から芽吹いていたが、導電ネットワークの形成と積層アーキテクチャを標準化し、実装を見据えたモジュールとして提示した意義は大きい。素材・構造・製造を一体で捉えた設計思想が読み取れる。
45社の工業会、普及の地図を描く
公開と同じ日に「蓄電コンクリート工業会」が正式に発足した。全国のコンクリートメーカーや製造設備サプライヤーなど45社が参画し、標準モジュールを基盤とする開発計画と事業計画を共有した。東京都のGX関連産業創出支援事業の採択を受けた研究開発の方針も説明され、供給体制の全国展開や分散型エネルギー網の構築、自己発熱機能による省エネなど、社会実装に向けた連携を加速させる構えだ。
誰に有利なのか。まずは建築・土木の現場である。建材と蓄電体を兼ねることで、設置スペースや意匠上の制約を抑えつつ、再エネの自家消費を高める選択肢になるとみられる。他方で、製造や保守、リサイクルの新しい標準づくりが必要になる。工業会の設立は、その制度設計を産業横断で進めるための受け皿でもある。偶然ではなく、普及への必然をつくる体制づくりと映る。
広がる射程、技術はどこまで行くか
現時点で確認されている範囲では、大学側の研究も加速している。2025年10月1日には、導電性コンクリート(ec³)の最適化によりエネルギー貯蔵性能を従来比でおおむね一桁向上させたとする報告が公表された。家電を動かす実証例も示され、材料設計と製造プロセスの改良が地続きで進む様子がうかがえる。産学の歩幅がそろえば、住宅の基礎から道路、橋梁まで、蓄電を内包するインフラ像が現実味を帯びる。
一方で、評価軸は増える。安全規格、耐久性、コスト、ライフサイクルでの環境負荷――どれをどう最適化するかで最終形は変わる。点灯式の小さな光は、地域の再エネと接続しうる素材の可能性を示したにすぎない。だが、標準モジュールという共通言語ができたことで、検証と普及の速度は上がるはずだ。技術革新を社会の文脈へ橋渡しする作法が、いま問われている。