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雨上がりの北京・会場に人波が戻った。2025年10月18日に開かれた第6回中国インターネットインフラリソース会議で、中国互联网络信息中心が『生成AI応用発展報告書（2025）』を公表した。生成AIのユーザーは2025年6月に5億1500万人、普及率は36.5％。2024年末から2億6600万人増と半年でほぼ倍増し、AIが生活と産業の“基盤”へ移る速度の速さが際立つ。
半年で5億人規模へ、広がる「日常インフラ」の手触り
報告書は、2025年6月の時点で生成AIユーザーが5億1500万人に達し、普及率が36.5％へ上昇したと示した。2024年12月からの純増は2億6600万人で、半年の伸び率は106.6％。現時点で確認されている範囲では、この加速は年初以降の話題化と製品改良が重なった結果と映る。街の検索から家庭の学習、職場の調べ物まで、使い手の裾野が一段と広がっている。
使われ方にも輪郭が出てきた。最も一般的なのは質問に答える用途で約8割が日常的に活用するという。文章の生成・加工が3割台、画像や動画などの生成が3割前後と続き、情報取得と初級の創作支援が“標準機能”として定着しつつある。単なる試用から、毎日の小さなタスクを置き換える実用段階へと歩みを進めたといえる。
ユーザー像も動いている。40歳以下の中堅・若年層が7割超を占め、学生や若手の専門職が核になっているとみられる。大専・本科以上の高学歴層が約4割を占める点も特徴だ。学び直しや資料作成の補助、複数アプリをまたいだ作業の効率化など、知的労働の“下支え”としての役割が現場で太くなっている。
国産モデルへの傾斜、競争地図の塗り替え
報告書は「超9割のユーザーが主に国産大モデルを使う」と指摘した。DeepSeek、Qwen（通義千問）、百度の文心ERNIE、バイトダンスの豆包などが牽引役となり、米国勢のChatGPTやGeminiに対抗する中国独自のエコシステムが広がっている。会場で端末を手に試す参加者の姿からは、機能だけでなく料金や接続性を含む総合力で選ぶ空気が伝わってくる。
推論コストの急低下も追い風だ。報告書は過去2年で推論コストが280倍以上下がったとし、同時に軽量モデルの台頭を挙げた。高性能の主力モデルと、端末や業務現場に寄り添う軽量モデルの“二刀流”が進み、導入の敷居が下がっている。小さな現場にも置けるAIが増え、試行から常用へ移るスピードをさらに押し上げていると映る。
半年でユーザーが倍増した背景には、年初の話題化に加え、国産プロダクトの体験改善があるとみられる。回答の正確さや多モーダル対応が伸び、検索や翻訳といった既存行為に溶け込んだ。モデル間の“乗り換え”も活発で、用途ごとに最適なモデルを使い分ける行動が広がっている。競争の軸は単独の性能から、使い勝手と運用コストを含む“体系”へ移りつつある。
産業と公共領域へ、浸透の現在地とこれから
消費者向けを超えて、産業と公共の現場でも実装が加速している。報告書は、2025年8月時点で生成AIサービスの備案が538件、アプリ・機能の登録が263件に達したと整理した。スマート検索、コンテンツ制作、オフィス支援に加え、農業や製造、科学研究での実証が積み上がり、実験室の外で価値を示す段階に入った。教育や医療、対面サービスの現場でも活用の芽が太くなっている。
会場の展示では、工場の検査工程を補助するビジョンモデルや、研究者の文献要約とコード生成を束ねるワークフローが目を引いた。現場の声を拾えば、属人作業の平準化や新規ユーザーの学習負荷を減らす点で効果が見え始めているという。一方で、データ品質の確保、説明可能性、現場ごとの権限設計など運用面の課題も併走する。導入と統治の両輪が問われる局面である。
普及率が3人に1人を超えた今、論点は「どこまで伸びるか」から「どう根付かせるか」へ移る。報告書が描く次の焦点は、モデル統合とオープンコミュニティ、具身知能やエージェントの実用域拡大にあるという。生活と産業の“編み目”にAIを織り込めるか。半年で姿を変えた日常の光景は、次の半年がさらに重くなることを示唆している。
