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警視庁本部の通路を、捜査員に囲まれた男が無言で歩いていった。刻印を偽造した金の延べ棒を正規品と偽って売ったとされる詐欺事件で、金の調達役とみられる中国籍の男が11月下旬までに逮捕された。すでに身柄を確保されている売却役のメンバーに続き、組織の中枢にいたとされる人物の逮捕で、複雑だった金取引の裏側が少しずつ形を帯びてきている。
偽造刻印の金塊、調達役とされる男の逮捕
この事件では、金の延べ棒に実在する事業者名の刻印を入れ、偽の証明書まで添えて本物の投資用金であるかのように装い、買い手から現金をだまし取った疑いがもたれている。警視庁はこれまでに、中国籍の男や女あわせて8人を詐欺などの疑いで逮捕し、被害額は少なくとも6億円以上に上るとみている。捜査は、都内を中心に複数の貴金属取引事業者へと広がっている。
新たに逮捕された唐明昊容疑者は、2025年3月ごろ、刻印が偽造された金の延べ棒8キロを正規品と偽り、あわせて約1億2000万円をだまし取った疑いが持たれている。報道によれば、唐容疑者は40代の中国籍とされ、偽造された金塊をかき集めて日本側に流す調達役、あるいはグループのトップだったとみられている。警視庁は、偽造品の入手経路や保管場所の特定を急いでいる。
捜査当局は、このグループが同様の手口で約95億円分の金の延べ棒を売却していた疑いがあるとみている。テレビ局の取材では、わずか4か月ほどの間に偽造金塊の販売で巨額の売り上げを上げていたとの情報も伝えられた。警視庁は、唐容疑者ら逮捕者の認否については明らかにしておらず、被害者や関係取引先の範囲を洗い出しながら、組織の資金の流れも含めて全容解明を進める方針だ。
金取引ブームの陰で問われる「真贋の見抜き方」
近年、金の国際価格は高止まりが続き、個人投資家や企業が延べ棒を購入する場面が増えている。延べ棒には本来、品位を示す刻印や製造業者名が打たれ、いわゆるホールマーク(品位証明の刻印)と鑑定書が信頼の担い手となる。しかし今回の事件では、その仕組み自体が悪用された。偽造グループは実在する事業者名を刻印し、見慣れた体裁の証明書を添付することで、専門業者でさえ一見しただけでは真贋を見抜きにくい状況をつくり出していたとみられる。
同じ警視庁生活経済課は、2025年11月には韓国から金塊を密輸した疑いで日本人の男2人を逮捕しており、計1トン、100億円超に相当する金が動いた可能性が指摘されている。表向きは合法な貴金属取引であっても、その前段階や裏側では偽造や密輸がからむケースが少なくない。国境をまたいだ取引ルートが複雑化するなかで、刻印や証明書だけに頼った「目利き」が通用しない局面が増え、検査機器や取引履歴の確認など、多層的なチェックが求められている。
今回の事件では、偽造金塊がどこで作られ、どのような経路で日本国内の業者に届いたのかが今後の焦点となる。捜査が進めば、海外の工場や仲介業者が関与していた可能性も浮かぶかもしれない。高値が続く金は多くの人にとって資産の象徴である一方、その輝きに引き寄せられるように、不正な商売も後を絶たない。押収された延べ棒を捜査員が一本ずつ確かめる様子には、価値あるものほど丁寧に見極めなければならないという、静かな戒めがにじむ。
