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東京ビッグサイトの東7・8ホールで、2025年10月16日と17日の2日間、「ハイウェイテクノフェア2025」が開かれている。人の波が巡る会場の一角で、人里に現れるクマへの対策を示す柵が足を止めさせた。高速道路の現場が“境界”をどう描くか。安全と共存をめぐる模索が、新しい装置の質感と来場者の視線に浮かんでいた。
よじ登らせない発想が光る
雪崩防止柵や防風柵で知られる日本パーツセンターは、既存の金網式柵の上部に波状の金属板を取り付けた新型を披露した。爪がかりのない形状と表面処理で滑落を誘発し、よじ登りを物理的に断念させる狙いである。現段階では本州のツキノワグマを主対象としつつ、北海道のヒグマに対応する仕様も並行して検討が進むと説明した。
開発はクマ被害が相次いだ2023年ごろに着手したという。鉄板には専用コーティングが施され、雨天や結露でも滑りやすさを維持する設計とした。電流などの攻撃的機能は持たず、あくまで生活圏を分ける考え方に立つ点が特徴である。動物が引っかく、舐めるといった接触にも劣化しにくく、野ざらしでもおおむね50年程度の耐久を想定する、と担当者は語った。
実証としては、空腹状態のツキノワグマに対し、柵最上部に食べ物の匂い袋を置く試みを行ったとされる。必死に登ろうとしても爪がかからず滑り落ち、到達できないことを確認したという。現時点で確認されている範囲では、執念深い個体への抑止効果を示す事例といえそうだ。会場では実寸のサンプルに触れ、滑りを確かめる来場者の姿も目立った。
道路の安全と“境界”のつくり方
設置想定は高速道路のサービスエリアや隣接緑地の周辺だという。人やごみ置き場に近づく動線を物理的に断ち、侵入段階で諦めさせることで、人とクマの直接遭遇を減らす狙いがある。結果として、高速道路上での動物の轢死、いわゆるロードキルの抑制にもつながるとみられる。生息地の拡大と人里の近接が進むなか、境界設計の巧拙が安全を左右する局面が広がっている。
公園など施設向けの派生製品は、既存柵の上に金属板ユニットを後付けする構成を想定する。既設資産を生かせるため、施工の制約が多い現場でも導入のハードルは下がると映る。見通しを確保しつつ上部だけを“つるつる”にする発想は、景観や利用者の安心感にも配慮した折衷策といえる。攻撃ではなく距離を取る設計思想が、一連のラインアップに通底していた。
会期は16日・17日ともに10:00〜17:00で、会場は東7・8ホールである。主催は公益財団法人高速道路調査会で、共催にNEXCO東日本・中日本・西日本が並ぶ。主催者発表によれば出展は342者に及び、オンライン展も10月9日から11月6日まで併催された。多様な技術が集まるなかで、野生動物と人の距離を設計するテーマは、とりわけ現場感のある議論を呼んでいた。
既に導入進む“オーバーハング”
別のブースでは、日鉄神鋼建材がクマ対策用の金網柵を展示した。上部の金網が外側に張り出す「オーバーハング」形状が要で、上ろうとする個体の重心を外へ振り、上方への推進力を失わせる仕組みである。担当者は、同構造の柵がすでにNEXCO東日本に納入済みと説明した。高所ほど足場がなくなる設計は、登攀を途中で断念させる意図が明確だ。
オーバーハングは抑止に加え、発見と通報までの時間を稼ぐ効果もあると同社は強調する。屋外カメラや巡回と組み合わせれば、侵入未遂の段階で対応を打てる余地が広がる。波状金属板で“取っ掛かり”を消す日本パーツセンターの方式と、張り出しで“越えさせない”日鉄神鋼建材の方式。アプローチは異なるが、どちらも排除ではなく共存のための境界づくりに重心が置かれている。
両社の製品は、今後NEXCO各社や地方自治体への提案が進む見込みだ。ドングリの不作や人里での餌付けが誘因となる出没の増減は年ごとに揺れるが、境界を賢く設計する取り組みは平時からの備えになる。高速道路という巨大インフラの周縁で、動物と人の生活圏を静かに分ける技術。会場の熱気の先に、現場へ降りる実装の足取りが見えてきた。