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水素とバイオ燃料を同時に燃やし、運航時の温室効果ガス排出を実質ゼロにする――港で大型船を支えるタグボートで、その挑戦が現実味を帯びてきた。日本財団が2026年1月14日に公開した国内初の水素混焼エンジン搭載タグは、燃料転換が難しい海事分野の脱炭素を「実船」で示した形だ。
世界初の「ゼロカーボン航行」 水素混焼タグの到達点
日本財団の発表によると、タグボート「天歐(てんおう)」は2025年12月24日、水素と植物由来のバイオディーゼル燃料(B100)を混焼し、運航時に温室効果ガスを実質的に排出しない「ゼロカーボン航行」に世界で初めて成功した。タグボートは短時間で大出力を繰り返し使うため電動化だけでは置き換えにくく、実用域の燃料転換が成立するかが焦点だった。今回の成果は、机上の試算ではなく、港の現場を想定した運用で成立し得ることを示した点が大きい。
同財団が2022年1月に始めた「ゼロエミッション船プロジェクト」の枠組みで、ジャパンハイドロなどが参画するコンソーシアムが開発を進め、常石造船から2025年10月に引き渡されたという。船体には大容量の高圧水素ガス貯蔵・供給システムと水素混焼エンジンを搭載し、従来のA重油に水素を混ぜる運用でも、化石燃料のみのタグと比べCO2を約60%削減できると日本財団は説明する。そこから一段踏み込み、重油の代替をB100に置き換えることで「運航時ゼロ」を狙った。要するに、船側の技術だけでなく、燃料品質・充填手順・安全確保まで含めて成立させる総合技術が問われる段階に入った。
実証から港湾インフラへ 鍵は水素供給とコスト
今後は福山市の常石地区で実証を進め、開発中の洋上水素供給装置と組み合わせて国内港湾での実運用化を目指す構想だ。水素は「燃やしてもCO2が出ない」一方、港で安定的に供給する設備とルールが整わなければ運用が止まる。さらに、燃料の脱炭素効果は製造段階の排出も含むため、いわゆるライフサイクル全体での低炭素化が普及の条件になる。実船の成功がそのまま普及を保証するわけではなく、供給網と制度設計が次のボトルネックになる。
海事分野ではアンモニア燃料やバッテリー、合成燃料など選択肢が並走しており、タグボートはその中でも「港の作業船」という用途の明確さから、導入効果を測りやすい。日本財団は今回の達成を足がかりに、カーフェリーやタンカーなど他船種の開発・実証も視野に入れるとしている。港湾での水素需要が立ち上がれば、燃料供給装置や保安・教育の標準化が一気に進む可能性がある一方、コスト負担の所在や燃料調達の安定性が合意できなければ実装は伸び悩む。実証の次は、技術の優劣よりも「港の運用に溶け込む設計」と「継続的に回る事業モデル」が成否を分ける局面となるだろう。
