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捜索用のサイレンが海岸線に響いた。2日に所在不明とされたイスラエル国防軍のイファト・トメル=イェルシャルミ少将は、その後無事に発見され、3日までに警察に拘束された。昨年の拘束施設での虐待を示す監視映像を自ら流したと認め、先週に職を辞したばかりの軍法務トップの逮捕は、軍の説明責任と政治の分断を鋭く照らした出来事となった。
失踪と逮捕、数十時間のうつろい
少将は2025年10月31日、監視映像の提供を自ら承認していたと認め、軍の法務トップを辞任した。2日には消息が分からなくなり、テルアビブ北方の海岸地帯で大規模な捜索が行われた。ほどなく無事が確認され、警察に身柄を拘束された。捜査は映像流出に関わる違法行為の有無を中心に進められている。
辞任の書簡で少将は、軍の法執行当局に向けられた虚偽の言説に対抗する目的で資料提供を認めたと説明した。さらに、被拘束者への暴力が合理的に疑われる場合は調べる義務があると記した。軍の自浄と兵士の士気のあいだで揺れる立場を、淡々とした言葉がにじませている。
一連の捜査では、軍検察の元トップであるマタン・ソロモシュ大佐も関与が疑われ、当局により身柄を確保されたと伝えられる。手続きは刑事事件として扱われ、供述や通信記録の精査が続いている。数日で事態が急展開した背景には、映像が国内の激しい論争の火種となってきた事情がある。
流出映像が伝えた痛み
問題の映像は2024年8月、民放が放送した。場所はイスラエル南部のスデ・テイマン軍事基地に併設された拘束施設。予備役の兵士らが暴徒鎮圧用の盾で視界を遮り、拘束者を取り囲む様子が記録されていた。映像の外側で暴行が加えられ、鋭利な物で直腸付近を刺したとする捜査の説明が、その後の起訴内容で補われた。
被拘束者は肋骨骨折や肺の損傷、肛門部の裂傷など重い傷を負い、医療処置を受けたとされる。軍はこの件で予備役5人を訴追したが、被告側は容疑を否認している。画面に映らない場所で起きた行為をどう立証するか、傷の医学的所見や当日の配置、通信履歴などが焦点となっている。
捜査の過程では、兵士らの取り調べに反発する抗議が現場周辺で過熱し、施設の秩序が乱れる場面もあった。戦時下での緊張が積み重なり、軍の内部規律と社会の感情が衝突した。映像の存在は、密室での行為を可視化する手がかりとなる一方、流出という手段が新たな論点を生み、司法と世論の折り合いを難しくしている。
政治の圧力と法の線引き
辞任直後、イスラエル・カッツ国防相は少将の復職を認めない考えを明言し、判断を厳しく批判した。与党側の議員や右派系の論者は、映像流出が兵士の名誉と国家の信用を損なったと主張した。他方、法の執行に関わる当局者や人権団体は、疑惑の独立した検証こそが軍の信頼を支えると訴えてきた。
ネタニヤフ首相を含む政権幹部からは、流出が国の対外イメージに深刻な打撃を与えたとの見方が示された。政府広報と刑事捜査が交錯するなか、事件は単なる内部規律の問題を超え、情報公開の是非や公益通報の線引き、軍の司法機能の独立性にまで議論を広げている。
右派は流出を中傷と受け取り、左派は虐待報告の具体的証拠だとみる。視点が真逆に分かれるほど、映像の重みは増す。捜査は流出経緯の違法性と、映像が示す実体の両面を追う。どちらかだけでは判断が歪むためだ。両方に光を当てることで、軍の統治と市民の信頼がどこで結び直せるのかが見えてくる。
国際社会が見ているもの
昨年9月に公表された国連の独立調査委員会の報告は、拘束下のパレスチナ人に対する広範かつ体系的な虐待や性的暴力を指摘した。戦時下でその深刻度が増したとも記され、拘束施設や移送の過程での扱いが詳細に列挙された。今回の映像は、そうした国際報告と国内の刑事手続きが接点を持つ稀な場面を示している。
少将の逮捕が意味するのは、証拠をどう公にし、誰がどの権限で線を引くのかという統治の作法だ。映像の先にあるのは、個々の兵士の名誉や怒りだけではない。軍の法務が独立性を保てるか、そして暴力の有無を検証する制度が機能するかという、静かで長い問いかけである。
参考・出典
- Israeli military’s former top lawyer arrested over leaked prisoner video
- Treatment of detainees and hostages and attacks on medical facilities and personnel (7 October 2023 to August 2024) – Third Report of the Independent International Commission of Inquiry on the Occupied Palestinian Territory and Israel (A/79/232)
