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年次会合前のワシントンは慌ただしい。国際通貨基金のゲオルギエワ専務理事が、アルゼンチン支援の枠組みについて米国、世界銀行、米州開発銀行と詰めの協議を進めており、近く決定すると語った。米国が保有する特別引出権を貸し出す案も浮上し、ミレイ政権の改革路線に国際支援の網が重なる。支援の形と規模が、同国のインフレ沈静と市場の信認を左右しそうだ。
決定は間もなく—広がる支援の輪とＳＤＲ案
年次会合の空気が熱を帯びる中、専務理事はロイターの取材に応じ、支援策の最終調整が進むと明かした。米国、世界銀行、米州開発銀行と緊密に動き、複数の選択肢を机上に載せているという。発言は、先送りされがちだった資金繰りの解に、ようやく具体的な道筋が見えつつあることを示す。
鍵の一つが特別引出権（ＳＤＲ）の扱いである。専務理事は、米国が自国のＳＤＲをアルゼンチンに貸し出す案が検討対象に含まれると示唆した。これは2023年にカタールが支援に用いた手法に近い。ロイターが報じたのは2025年10月9日 04:13で、決定は「まもなく」との見通しが示された。
ＳＤＲはＩＭＦが創設した国際準備資産で、加盟国は保有分を他国に融資することができる。直接の財政資金ではなく、準備資産の移転で流動性を補う仕組みだ。為替と債務の火消しに即効性を期待できる半面、返済条件や他の資金とどう組み合わせるかで効果は大きく変わる。制度設計の妙が問われる局面である。
改革の手応えと「最後のプログラム」発言
専務理事は、ＩＭＦがアルゼンチンと「非常に、非常に長い間」向き合ってきたと振り返りつつ、ミレイ政権の断固とした改革を評価した。物価の抑制、規制撤廃、民間に好まれる制度づくりが進んだと述べ、「楽観的に言えば、これがＩＭＦによる最後のプログラムになり得る」とも語った。重い借歴史に区切りをつけたい意志がにじむ。
この評価は、春の記者会見でも繰り返されている。ＩＭＦの広報トップは2025年3月27日、同国の安定化策を「目を見張る」と表現し、財政の大幅な引き締めや中央銀行の健全化、規制の撤廃が成果を生みつつあると説明した。実体経済の持ち直しや実質賃金の回復、貧困率の低下にも言及している。
一連の言葉は、支援が単なるつなぎ資金ではなく、構造改革の推進力と映ることを示す。カギは、痛みを伴う調整の最中に政策の一貫性を保ち、市場と国民の期待を管理できるかである。ＩＭＦは成長を促す改革の継続を求め、当局も次の段階へ進む意欲を見せる。期待と戒めが同時に走る。
焦点は外貨準備の積み上げ—資金の形と政治の影
専務理事が最優先課題に挙げたのは外貨準備の厚みである。債務返済や内外の資金需要に耐える備えができれば、改革は息切れせずに走り続けられるという。国民の支持を保つには、物価の落ち着きとともに、為替の安定と輸入の目詰まり解消が欠かせない。準備高は、信認を映す鏡でもある。
一方で、資金の規模と設計はまだ確定していない。ＩＭＦは新たなプログラムの議論が「大詰め」にあり、相応の規模を巡る協議が進んでいると説明するが、最終判断は理事会に委ねられるとしている。単発ではなく段階的な実行が通例で、為替制度や資本規制との整合も詰めの論点となる。
米国の関与の形も揺れる。米財務長官は、米国が直接資金を拠出するのではなく、信用のスワップ・ラインを提供する立場だと説明した。他方で、同国の政治状況や対中関係を巡る国内論争が支援の是非に影を落とすとの見方もある。決定が近いなか、設計と政治の両睨みが続くとみられる。
