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学歴を偽ったと指摘されている静岡県伊東市の田久保真紀市長（55）に対する2度目の不信任決議案が、10月31日の臨時会で提出される見通しだ。29日の会派代表者会議で、改選直後の議員20人中19人が賛意を示した。可決されれば田久保市長は失職し、12月に市長選が実施される公算が大きい。混迷の市政は次の岐路に立つ。
揺れる市庁舎、2度目の不信任へ
夕刻の市役所には、臨時会を前にした緊張が漂っている。29日の会派代表者会議では、杉本一彦座長の下、2度目の不信任案を31日の臨時会に提出する方針を正式決定した。新たに選ばれた20人の市議のうち19人が賛成に回ったとされ、「市長の不信任を掲げて市議選をやった。公約を果たせるので、ほっとしている」との言葉が、長い軋轢の重さを映す。
臨時会の議事は、市議選の経費6300万円を含む専決処分の承認、台風被害の復旧に関する補正予算の審議が先行し、最後に不信任案が上程される段取りだと伝わる。復旧と日常の行政執行を止めないためにも、まずは財政措置を確定させ、その後に政治の決着をつける構図が浮かぶ。議場に入る議員の表情に、実務と政治判断のせめぎ合いがにじむ。
この局面は突然ではない。現時点で確認されている範囲では、9月1日の定例会初日に不信任案が全会一致で可決され、田久保市長は9月10日に議会の解散を選んだ。その後、10月の市議選で議会は改選され、再び不信任案の可否が問われる舞台が整った経緯である。長引く対立の焦点には、市長の学歴をめぐる説明の妥当性があるとみられる。
可決なら失職、市長選の地図
地方自治法の手続きは明快である。解散後に成立した新議会で再び不信任決議が可決されれば、首長は失職する仕組みだ。31日に提出予定の不信任案が再可決されれば、田久保市長は職を失い、行政の最高責任者は空席となる。執行部は日々の事業を進めながら、政治の空白を最小化する綱渡りを強いられると映る。
再可決の先にあるのは選挙である。可決の翌日以降、12月の市長選実施が見込まれ、年末にかけて短期決戦となる可能性が高い。市選管関係経費は既に専決処分で積み増され、議会承認を待つ段階だ。市街地では観光と地域行事が重なる時期だけに、行政の連続性をどう確保するかが住民の最大の関心事となっている。
一方で、次の首長選の顔ぶれも見えてきた。現職の田久保市長は去就を明確にしないが、出馬への意欲をにじませているとされる。前市長の小野達也氏（62）は立候補の意向を固め、11月7日に出馬会見を行う予定だと伝わる。小野氏は「伊東を正常に戻したい。新図書館は市民から広く意見を聞き、ゼロベースから見直す」と述べ、争点の輪郭を示した。
尖る争点、信頼の回復はどこから
学歴をめぐる疑義は、市政の信頼に直結する重いテーマである。一部報道によれば、9月の時点で議会の調査特別委員会が「故意に偽った」と認定し、刑事告発も受理されたとされる。市長は主張を続けるが、説明はなお十分とはいえず、対立は深まってきた経緯がある。再度の不信任が問われる背景には、事実関係の解明と説明責任の不足への違和感があるとみられる。
同時に、市民生活に直結する課題も積み残されている。台風被害の復旧は冬の観光シーズンに間に合わせたい案件であり、新図書館整備は費用と機能の再設計が求められる。小野氏はゼロベースでの見直しを掲げ、現職は推進の姿勢を崩していないとされ、選択肢の距離は近くない。政策対立と信頼回復を同時に進める難しさが広がっている。
商店街では「まず道路とインフラを」との声が漏れ、学校現場からは「図書館は学びの軸だ」との期待も聞こえる。市庁舎の会議室で交わされる言葉が、市井の実感に寄り添うのかが試される局面である。政治の物語は終盤に差し掛かるが、結末はまだ白紙だ。31日の議場で、伊東は次の一歩を選ぶことになる。
