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元FBI長官ジェイムズ・コーミー氏が、議員への虚偽陳述と議会手続き妨害をめぐる起訴に対し、無罪を主張した。起訴は2025年9月26日に公表され、審理は政治と司法の境界を問い直す局面に入った。年明けの初公判へ、法廷の焦点が徐々に絞られている。
アレクサンドリアの法廷で始まった静かな攻防
秋の空気が冷える連邦地裁の廊下に、傍聴希望者の列が静かに伸びた。2025年10月9日、コーミー氏は罪状認否で無罪を主張したと報じられている。事件はヴァージニア州アレクサンドリアの連邦地裁で審理され、担当はマイケル・ナクマノフ判事であるとみられる。
この日の手続きでは、被告の身柄拘束は科されず、公判までの出廷義務を前提に解放されたと伝えられている。弁護側にはパトリック・フィッツジェラルド弁護士が就き、今後の争点整理と事前の法的申し立てが急がれる構図が浮かぶ。
裁判所は初公判の開始日を年明けに置いた。現時点で確認されている範囲では、期日は2026年1月6日とされる。審理の長さや証拠の扱いは未確定だが、早期決着をにらみつつも、法廷は緊張を帯びたまま進むと映る。
問われるのは「虚偽陳述」と「議会妨害」
起訴状が指摘するのは二点だ。ひとつは議会への虚偽陳述、もうひとつは議会手続きの妨害である。焦点となる事実関係は、2020年9月30日の上院司法委員会における口頭証言に関連するとされる。連邦大陪審は2025年9月26日に、これら2件の訴追を認めた。
虚偽陳述の罪は、連邦捜査や議会監督に対して重大な影響を及ぼす行為を禁じる枠組みの中核に置かれている。議会妨害の罪は、監督機能の適正な行使を妨げる意図を問う構成で、当局は口頭証言に伴う事実認識とその表現を精査しているとみられる。
有罪となった場合の法定刑は、各罪で最長5年の禁錮とされる。量刑は判事がガイドラインや事情を踏まえて判断する。審理を統括するナクマノフ判事の下、証拠開示の範囲や証言の扱いが、今後の帰趨を決める鍵になるだろう。
政治の影と司法の独立、ぶつかる視線
起訴の発表では、司法当局は公益と説明責任を強調した。行政権力に対する議会の監督が民主主義の基盤であり、その過程での虚偽や回避は許されないというメッセージがにじむ。制度の信頼回復を掲げる当局の姿勢が前面に出ている。
一方で、弁護側は選別的または報復的な訴追だと主張し、公訴棄却の申し立てを複数準備していると伝えられている。さらに、事件を担う連邦検事の任命手続きの適法性も争点に据える方針だ。法廷は、手続きの正当性そのものを点検する段階に入ったといえる。
元長官という象徴的立場と、議会証言という公共性の高い場面が重なる本件は、法と政治の境界を試す。証拠の中身がどこまで具体化されるのか、そして判断がどれだけ説得力を伴うのか。年末から年明けにかけて、その答えが形を帯びていく。
