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９月中旬に発足した立憲民主党の新執行部が掲げた「野党一本化」が、９月３０日の野党３党協議で早くも壁に突き当たった。衆参の与党が少数にとどまるなかで、首相指名選挙をめぐる主導権を握れないまま時間だけが過ぎれば、政権交代の現実味はしぼむ。野田佳彦代表の求心力と、各党の計算がぶつかる局面に入ったと言える。
野党結集の模索が最初の関門で止まった
９月３０日、国会内で立憲民主党、日本維新の会、国民民主党の国対委員長が会談した。位置づけは首相指名選挙に向けた「キックオフ」だったが、協議は「野党結集は難しい」との認識共有で終わった。現時点で確認されている範囲では、誰を推すかという核心に踏み込む前に、テーブル自体が安定しなかった構図だ。
会談後、立憲の安住淳幹事長は「真剣な話し合いまでたどり着けない」と述べ、初会合での前進に白旗を掲げた形になった。他方で、維新と国民は「本当に一本化をめざす意思があるのか」との温度感を隠さず、政局の焦点が与党側の動きへ移る中で、距離を測る姿勢を崩さなかった。
野田代表は新体制発足後、「野党間の連携を協議したい」と繰り返し、立憲以外からの首相候補擁立にも含みを残してきた。だが具体的な水面下交渉は見えず、３０日までに他党へ働きかけた形跡は乏しい。現時点で確認されている範囲では、期待先行のメッセージが、実務の遅れで空転した印象が残る。
与党過半数割れの国会で何が問われているか
昨秋の衆院選と今夏の参院選を経て、自民・公明の与党は両院で少数に沈んだ。戦後で初めて、首相指名で与党候補が自動的に選ばれる構図が崩れ、院の多数派形成が鍵を握る状況に変わった。こうした力学の転換は、野党の側にこそ重い宿題を突き付けている。
衆院の議席を軸に試算すれば、立憲、維新、国民の３党を合わせて２１０で、過半数には２３３が必要になる。この差を埋めるには、共産など他党の協力が欠かせない。一方で、政策距離の大きさや支持層の反発をどう乗り越えるかという現実の壁は高い。一本化のスローガンだけでは届かない数字が、机上に横たわっている。
首相指名は衆参両院で行われるが、決め手は結局のところ「誰に投票するか」をそろえられるかどうかだ。与党内の主導権争いが一段落し、連立の枠組み見直しが進めば、野党の時間は急速に目減りする。静かな議事堂で、可視化されない駆け引きが始まっている。
新執行部の遅れと「真剣さ」への視線
野田代表は「第１党から第３党まで固まれば勝機はある」と語ってきた。だが、現場の実務は先に進まなかった。幹部から明確な交渉指示が出るのが遅れ、国対ラインの接触も限定的だったとの受け止めが広がる。一部報道によれば、執行部内に「現実味が薄い」との空気も漂い、重たい空気が会議室に流れた。
その間に自民総裁選が走り出し、視線は自公の枠組み拡大へ移る。維新や国民の側からは「立憲に真剣さが見えない」との声が漏れ、立憲の側には「与党寄りと見られれば十分」という開き直りも見え隠れした。メディアのカメラが向く先が変われば、世論の風向きもまた変わる。時間は野党に優しくない。
昨年の衆院選後、野田氏は各党に自身への投票を求めて動いたが、結実しなかった。今回は党首会談の段取りすら見通せず、小沢一郎氏ら執行部に批判的なグループの苛立ちが増している。場面は似ていても、役者の動きが鈍れば結末は変わらない。政治は、号令よりも段取りを待っている。
首相指名までの短いカレンダーと残る選択肢
９月上旬、政権の頂点で交代が視野に入ったことで、野党の出番が訪れたはずだった。けれど、９月３０日を過ぎても一本化の糸口は細いままだ。首相指名の本会議日程が固まれば、各党の駆け引きは最終局面に入る。残り時間の短さが、戦略の練り直しを迫っている。
残された道は大きく二つだ。第一に、政策合意の最小公倍数を急ぎ詰め、投票先を一つに束ねること。第二に、与党内の分岐を見極め、院の多数派工作で局面をこじ開けることだ。いずれも容易ではないが、数字と日程が動かぬ現実である以上、言葉より先に手を打つしかない。
野田執行部が示すべきは、勝ち筋の物語と、そこへ至る工程表だ。誰と、いつ、何をすり合わせるのかを具体化し、交渉の優先順位を明確にすることが要る。現時点で確認されている範囲では、最初の関門でつまずいたという事実だけが残った。次の一歩を見せられるかが試金石になる。
