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農林水産省が、有機農業の推進の方向性を示す「基本方針」の見直しに着手した。地域ぐるみで生産から消費までをつなぐ「オーガニックビレッジ」が広がり、作付けの拡大が見え始める一方、次は買い手をどう増やすかが課題になる。食料・農業・農村政策審議会などで議論を重ね、2026年7月ごろの改定を目指す。
「作る」から「売り切る」へ、需要づくりが主戦場
有機農業は、地域の担い手育成や資材調達、学校給食・地元スーパーといった出口づくりまでを同時に進めないと、面積だけが先に増えて値崩れや販路の行き詰まりが起きやすい。オーガニックビレッジの増加で供給側が動き出した今、基本方針の見直しは「売る仕組み」を政策の中心に据え直す作業になる。
生活者側の体感に近いところでは、価格差と分かりやすさが壁になりやすい。売り場で選ぶ数秒の間に、産地の努力や環境面の価値が伝わらなければ、結局はいつもの商品に戻ってしまう。自治体の公共調達や外食・中食のメニュー化など、日常の接点を増やす設計が問われる。
5年ぶりの改定、改正基本法と「みどり戦略」を織り込む
基本方針は概ね5年ごとに見直されており、農水省の整理では直近の策定は2020年4月である。今回は、2021年に公表された「みどりの食料システム戦略」を初めて本格的に反映する。みどり戦略は、環境負荷の低い生産や流通への転換を、技術革新と制度で後押しする構想だ。
さらに、2024年に改正され、同年6月に公布・施行された食料・農業・農村基本法の枠組みも織り込むことになる。生産現場の努力だけでは市場は動きにくいという前提に立ち、流通や消費の側も含めた「食料システム」全体での転換をどう進めるか。有機を選びやすい環境を整えられるかが、改定後の実効性を左右しそうだ。
