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建設分野の脱炭素を巡り、セメントの日本産業規格(JIS)が見直し局面を迎えている。セメント協会は、石灰石粉末を混ぜる「石灰石混合セメント」を国内で初めて本格的な規格として位置付ける検討に乗り出した。セメント産業のCO2排出は石灰石の分解と燃料・電力由来が概ね6対4とされ、クリンカ(中間製品)をどこまで減らせるかが焦点だ。新たな規格が、現場で使える低炭素セメントを増やす起点となるかが問われている。
低炭素セメントは現場に何をもたらすか
セメント産業は国内の温室効果ガス排出の約4%を占め、そのうちおよそ6割が石灰石の脱炭酸によるプロセス起源とされる。クリンカの割合を減らし、代わりに石灰石粉末や高炉スラグ、フライアッシュなどの混合材を加えると、同じ強度でも1トン当たりのCO2排出を抑えられるためだ。既に高炉セメントなどの混合セメントがJISで定義され、省エネ・温暖化対策の手段として利用が広がってきた。
石灰石混合セメントは、身近な原料である石灰石を微粉末として少量加える点に特徴がある。普通ポルトランドセメントに石灰石を混ぜることで、既存設備や施工方法を大きく変えずにエネルギー起源の排出原単位を抑えられる一方、流動性や長期耐久性への影響を検証する必要がある。セメント協会が短期から長期まで段階的な目標を掲げるのは、性能評価と規格整備、現場での普及を並行して進める狙いがあるからだ。
規格改正だけでは届かない課題も
今回の規格改正の議論は、セメント産業が掲げる2050年カーボンニュートラル戦略の一部に位置付けられている。セメント協会は、クリンカ比を0.85から0.825へ下げる目標を示し、JISの少量混合成分の活用拡大などでプロセス起源の排出削減を図る方針だ。同時に、石灰石の脱炭酸で必然的に発生するCO2については、将来CCUSと呼ばれる回収・利用・貯留技術を組み合わせる必要があるとみている。
実際にNEDOの支援を受け、太平洋セメントは仮焼炉で発生する高濃度CO2を回収する「C2SPキルン」の実証を進めている。こうした技術と低炭素セメントの規格化がそろって初めて大幅な削減が見込める一方、公共工事の仕様や民間プロジェクトの設計、価格や供給の評価など運用面の課題は多い。規格改正をきっかけに関係者が新しい材料をどこまで選び取り、リスクと便益を分かち合えるかが、日本の建設分野が脱炭素の波を自らの強みに変えられるかどうかの試金石になりそうだ。
