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改札に並ぶ人の歩幅が、そっと変わり始めた。JR東日本は10月末に公表した2026年3月期第2四半期の決算説明資料で、きっぷ投入やSuicaタッチが要らない「ウォークスルー改札」を2028年度にも広域品川圏の在来線へ導入する方針を示した。上越新幹線での実証を起点に、混雑緩和や利用しやすさ、改札システムのコスト削減へつなげる狙いだ。
歩くだけで通れる改札、まずは上越新幹線で
新潟駅と長岡駅の新幹線改札に、顔認証を使う試験機が据え付けられた。開始は2025年11月6日、期間は2026年3月31日まで。対象は新潟〜長岡の新幹線定期利用者などのモニターで、事前に顔画像を登録して参加する。狙いは“歩いたまま”の通過をどれだけ安定して実現できるかを確かめることにある。
機器は2方式で、長岡側はゲート型、新潟側は既設改札に顔認証装置を被せるアドオン型だ。後者は改札設備を生かしつつ短期間で設置できるのが利点とされる。歩行速度やカメラ角度、通過距離といった条件を変えながら、認証の確度や通過処理の安定性を測る。顔認証は高精度化が進むが、駅の現場で再現性を検証することが肝になる。
この取り組みは「Suica Renaissance(Suicaの機能拡充を進める長期構想)」の一環だ。タッチを前提にしてきた認証・決済の在り方を、センター側の制御や新方式の認証と組み合わせて拡張する考えである。大きな荷物やベビーカーでも立ち止まらずに通れることがねらいで、ツールが乗車体験そのものを変えていく。
品川を核に在来線へ、段取りは春ごとに進む
在来線への展開は段階を踏む。2026年春に高輪ゲートウェイ駅と大井町駅へ設置し、翌春は広域品川圏の5駅(浜松町、田町、高輪ゲートウェイ、品川、大井町)で実証を行う計画だ。広域品川圏とは、再開発が進む品川周辺の駅群と都市機能を束ねるエリアの呼称である。実証結果を踏まえて展開を決め、延長後の期限に合わせて在来線の本格導入を視野に入れる。
JR東日本は方式を顔認証に限らず、複数のやり方を検討しているという。券売・改札のルールや運賃精算の確実性、異常時の応答など、駅の信頼性要件は高い。そこで実地のデータを重ね、通過案内や表示の分かりやすさ、装置の配置・幅員まで含めた体験設計を磨く。最終的には改札設備のライフサイクルコストを抑え、維持管理の負荷軽減にもつなげたい考えだ。
計画の背後には、都心の大規模再開発と人流の変化がある。広域拠点の結節点では、ピークの通過能力と快適性を両立する必要が増している。歩行速度のまま認証を終える仕組みは、同じスペースでさばける人数を押し上げる可能性がある。決算説明資料では2028年度にも在来線への導入方針が示され、段取りが“春ごと”に形を帯びてきた。
変える理由と、乗り場に残る課題
なぜ今、改札を変えるのか。働き手の確保が難しくなるなか、設備を賢くすることは運営の持続性に直結する。旅行客の大型手荷物やベビーカー、車いすの通過を滑らかにすることは、多様な移動の受け皿を広げる意味を持つ。タッチを前提にした動線から、歩行中心の動線へ。駅の混み合い方は少し違って見えるはずだ。
一方で、顔画像の取り扱いなどプライバシー面の丁寧な説明は欠かせない。今回の実証は任意参加で進められ、認証に失敗した際の誘導や代替手段も検証対象に含まれる。方式が複数想定されるのは、利用者の事情や好みが一つではないからだ。技術と運用を並走させ、誰にとっても“迷わない改札”をどう形にするかが試される。