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架空の外注費を計上しておよそ9800万円の税金を免れたとして、東京国税局査察部が千葉市稲毛区の防水工事業「KBホールディングス」と黒田希一社長(49)を法人税法違反と消費税法違反の疑いで千葉地検に告発したことが分かった。2024年5月期までの3年間で約2億8千万円の所得を隠したとされる今回の告発は、地域の工事会社にも税の公平性と取引慣行の見直しを迫っている。
架空外注費で9800万円脱税疑い 地域工事会社に突きつけられた現実
告発されたKBホールディングスは、マンションの大規模修繕などで防水や塗装、修繕工事を請け負うとされる企業だ。関係者によれば、同社は実在する会社や個人の名義を利用し、存在しない外注費を経費として計上することで利益を圧縮し、2022年ごろまでの3年間で約2億8千万円の所得を隠した疑いが持たれている。結果として法人税約7100万円と消費税約2700万円、合計約9800万円が納められなかった計算になるという。
架空外注費という手口は、工事の規模や内容を外部から把握しにくい建設・修繕分野で繰り返し問題になってきた。元請けと下請けが多段階で連なる業界構造の中では、実在する取引先名を使った虚偽の請求書を紛れ込ませても、外部からは実態が見えにくい。国税当局はこれまでも、同様の分野での不正計算に重点的に対応してきたと説明しており、実地調査や資料の突合を通じて、名義だけを借りた支出をあぶり出している。
隠した所得の使い道としては、貯蓄のほか、高級ブランド品の購入など私的な支出に充てられたとみられる。黒田社長はJNNなどの取材に対し、税務当局との見解の相違があったとしながらも、既に修正申告と納税を済ませたと説明し、「反省している」との趣旨のコメントを寄せたと報じられている。地域で日常的に工事を請け負う立場の企業が刑事告発にまで至ったことで、同業他社や取引先の間では、身近な取引の積み重ねが一線を越えれば刑事責任につながるという現実を改めて意識させられる形となった。
査察が狙う「悪質事案」とは 修正申告だけでは済まないライン
国税庁が運用する査察制度は、悪質な脱税者の刑事責任を追及し、その萎縮効果を通じて申告納税制度を守ることを目的としている。建設業など高額取引が多い業種は従来から重点分野の一つとされ、虚偽の経費計上や売上除外など、組織的・継続的な不正に対しては検察庁への告発を行ってきた。東京国税局の過去の公表資料でも、査察調査は「悪質な事案」を選別して着手し、刑事告発まで至った案件について概要を公表してきた経緯が示されている。
大阪国税局がまとめた2023年度の査察概要によると、同局が検察庁に告発した23件の脱税総額は約21億円で、1件当たりの平均脱税額は約9500万円だったとされる。今回のKBホールディングスの疑い額は約9800万円と伝えられており、全国で刑事告発に至る事案の中でも平均的な規模に位置づけられる。つまり、数千万円規模の不正であっても、手口が組織的で悪質と判断されれば、修正申告や納付を後追いで行っただけでは、刑事責任の追及を免れない場合があることを示している。
一方、国税庁は、実地調査だけに頼らず、企業自身による申告内容の自主点検や自主監査を促す仕組みも整えている。調査課所管法人向けには、決算調整事項などの漏れを確認するチェックリストを公開し、申告前に自ら誤りを把握して修正することを促している。中小の工事会社にとっても、帳簿管理や取引確認を日常的に行い、外注費や仕入れの実在性を内部で検証する体制を整えることが、結果的に査察リスクの低減につながる。今回の告発は、税務当局との「見解の違い」で片付けられない、経営判断とガバナンスの問題を突きつけているとの見方も出ている。
