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台北の党本部に集まった支持者のざわめきが、票の確定とともに静かに熱へと変わった。最大野党・国民党は18日に主席選挙を実施し、前立法委員の鄭麗文氏が過半を得て当選した。正式選出の女性党首としては史上2人目で、党の路線と対中姿勢に新たな色合いが差す。次期地方選や国政の駆け引きにも直結する一手と映る。
票が語った夜、数字が示した行方
集計を追う夜、最初に浮かんだのは僅差ではなく「過半」だった。国民党の発表によれば、鄭氏は6万5,122票、得票率50.15%で首位に立ち、6人の争いを抜けた。2位は郝龍斌氏で4万6,551票(35.85%)、3位は羅智強氏が1万3,504票(10.40%)だった。投票率は39.46%で、有効票は12万9,867票と整理された。
今回の選挙には現職の朱立倫氏は名を連ねなかった。党務の継続より路線の刷新を求める空気が漂うなか、鄭氏は内部の分岐を乗り越える象徴として浮上したとみられる。女性の正式な党首は洪秀柱氏に続き2人目で、党の顔ぶれにおける多様性の広がりも印象づけた。
投開票は18日の日中に進み、夜には結果が固まった。全党員有権者33万1,145人に対し、投票数は13万678票。「参加の重み」が数字に刻まれた格好だ。鄭氏は結果判明後、対立より結束を優先する姿勢を前面に出し、党内融和をまず示した。路線対立を抱えてきた組織に、ひと呼吸置くような調子が広がっている。
対中姿勢と「平和」の言葉、路線の輪郭
鄭氏はこれまでも中国大陸との関係強化を訴えてきた政治家だ。総統府与党と一線を画し、「対話」と「交流」を重ねることで緊張を抑えるべきだという立ち位置をとる。選挙後も「地域の平和の創り手になる」と強調し、対立をあおるレトリックから距離を置く構えを見せた。安全保障の議論でも、防衛費の大幅な積み増しには慎重な視線を向けている。
その一方で、対中関係のキーワードである「92年コンセンサス」への姿勢が注目される。一般に「一つの中国」を各自の表述で確認したとされる枠組みで、国民党は長くこれを対話の基盤としてきた。鄭氏もこれを重視してきたとされ、実務的な往来や経済協力を再起動させる意欲をにじませる。与党・民進党が距離を置くこの枠組みをどう台湾社会に説明するかが、最初の難所になりそうだ。
選挙戦では、SNSでの情報操作や外部関与を巡る憶測も飛び交ったが、当局が中国関与を確認した事実は現時点で見当たらない。鄭氏はそうした「色分け」の批判に反発し、レッテルではなく政策で競うべきだと訴えた。支持と警戒が交錯するなかで、言葉を行動に変えられるかが試される。
国会の力学と次の勝負どころ
政権は民進党だが、国会は与党単独過半に届かない構図が続く。国民党は民衆党と合わせて強い発言力を持ち、予算や法案で与党に修正を迫る場面が増えてきた。鄭氏の船出は、こうした「朝小野大」の力学のなかで始まる。防衛や産業政策、エネルギーの優先順位を巡り、現実的な妥協点をどこに描くかが政局の焦点になるだろう。
党運営では、分派を超えた人事と意思決定の透明化が要となる。内部の競争は激しかったが、「選挙の終わりは団結の始まり」というメッセージを実像にするには、若年層や無党派への接地を強める必要がある。地方からの吸い上げを太くし、都市部の中間層に届く政策言語を整えることが、次の一勝につながるとみられる。
具体的な日程も待ったなしだ。鄭氏は11月に正式就任し、2026年の統一地方選、そして2028年の次期総統選へと歩を進める。最初の数カ月で交渉のチャンネルをどこまで開けるか、そして台湾社会の不安と期待にどう応えるか。新体制の一挙手一投足が、海峡の波立ちにも国会の攻防にも影を落とす。
