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薄明のサンパウロで、救急外来に「視界がかすむ」と訴える声が続いたという。偽造酒に混入されたメタノール中毒が拡大し、各州の通報が相次いでいる。2025年10月6日 07:41に公表された連邦保健省の集計では全国で225件が登録され、うち確定16件。さらにサンパウロ州は10月8日 05:51の報告で確定18件・死亡3件とした。警察と保健当局が連動し、供給網の摘発と医療体制の増強が進む局面である。
数字が描く“いま”と地理
連邦保健省が示した10月6日朝の時点像は、登録225件のうち確定16件、調査中209件という構図である。内訳ではサンパウロ州が192件を占め、同州だけで確定14件・調査中178件と突出している。死者は全国で15件が通知され、うち2件が確定（いずれもサンパウロ州）、13件が調査中だと整理された。調査中の死亡はサンパウロ州7件、ペルナンブッコ州3件、マトグロッソ・ド・スウ州1件、パライーバ州1件、セアラー州1件と報じられている。
一方、サンパウロ州政府が10月8日早朝に示した州内集計は、総数176件、うち確定18件、調査中158件、棄却85件という推移である。死亡は10件が通知され、このうち3件が確定（サンパウロ市の男性2人、サンベルナルド・ド・カンポの女性1人）とされた。年齢や所在市の情報を丁寧に積み上げる州の更新からは、都市部を中心に症例が点ではなく面で広がる様相が浮かぶ。
連邦の整理では通知のあった州は13に及び、ディストリート連邦区やリオデジャネイロ、パラナ、リオグランジ・ド・スウなどが含まれる。ただし同じ10月7日から8日にかけ、リオデジャネイロ州はニテロイの疑いを棄却し、サンペドロ・ダ・アルデイアの1件のみが調査中と公表した。州発表は日々動くため、同日内でも数字に揺れが生じることを踏まえたい。
対策は“現場直結”へ
政府は9月末の段階で省庁横断の対応方針を打ち出し、保健省は中毒疑いの即時届出をSUSの全医療機関に指示した。連邦警察はメタノールの入手経路と州をまたぐ流通網の有無を捜査し、消費者保護当局は小売事業者向けに注意喚起と技術資料の送付を進める。背景には、従来の路上や極端な脆弱層に偏った“古い型”ではなく、バーや社交の場で流通する蒸留酒に混入する“新しい型”が出現したという危機感がある。
サンパウロ州は州内の「危機対策室」を中心に査察を強化し、10月8日朝の時点で176件を精査するプロセスを走らせている。6日には東部の倉庫で空の酒瓶約10万本が押収され、年初からの関連押収は計6.6万本に達した。捜査当局は「瓶の洗浄にメタノールを使った」「容量をかさ増しした」といった仮説を挙げつつ、鑑識結果の一部で基準超のメタノール陽性が確認されたと説明した。供給網の遮断と医療の同時強化という二正面作戦が進むと映る。
リオデジャネイロ州は情報公開の即応性を高めるため、州内の疑い・確定・棄却を可視化するパネルを公開した。加えて保健省からエタノール製剤の供給を受け、解毒治療の初動を速める備蓄も始めたという。各州の取り組みは濃淡があるが、届出から検査、治療、行政処分、刑事捜査までの一連の動線を短くする動きが広がっている。
何が変わり、何に注意すべきか
今回の特徴は、ジンやウイスキー、ウォッカなどの蒸留酒における「社交の場での摂取」と結びついた点にある。保健省は10月6日朝の更新で、通年の平均（年間約20件）に比べ、9月以降の届出が急増したと指摘した。視界のかすみや激しい腹痛、嘔吐、混迷などの症状は、飲酒後12〜24時間で現れることが多い。症状があれば速やかな受診と、同じ酒を口にした可能性のある周囲への連絡が肝要である。
数字には揺らぎもある。一部の現地報道や自治体発表では確定・死亡の数値が federal と州で食い違う場面が見られるが、これは棄却や追加届出、検査確定のタイムラグが原因だとみられる。保健省は毎日17時以降に更新を出す運用を示し、州も同様に日々の再集計を続ける。誰に有利かでいえば、摘発と治療の現場が迅速に動けるよう、統一手順と公開の速度が鍵を握る局面である。
旅行者や出張者を含め、購入経路が確かな蒸留酒に限定する、異常な安値や不自然な封緘の酒を避けるといった当たり前の対策が、今回は生死を分ける。供給網の摘発は着実に進むが、ボトルの再利用やラベル偽装が巧妙化する以上、個々の判断も防波堤となる。偶然か必然か——年末に向けて集いが増える季節に起きたこの事案は、習慣の見直しを迫っている。
参考・出典
- Ministério da Saúde confirma 225 registros de intoxicação por metanol após ingestão de bebida alcoólica
- Balanço metanol (7/10): casos descartados por contaminação em SP sobem para 85; força-tarefa apreende 100 mil vasilhames – Agência SP
- Governo do Estado lança painel informativo sobre intoxicação por metanol | Secretaria de Saúde (RJ)
